just b* friends3 | ナノ




3.

手を繋いでキスをして抱き合って、そうして私と文次郎は大人になった。些細なことで喧嘩をして一週間以上口をきかなかったり、一方的な焼きもちをやいて頑なになったりもした。でもその度にあいつの腕が伸びてきて、私の不安を根こそぎ攫っていった。あいつはいつもどんな時も間違ったりしない。私が欲しいものを、私より先に見つけてしまう。不器用で無愛想で気が利く方では決してないのに、私に対しては異様に鋭かった。正しく文次郎は私専用なのだと、いつだったか伊作が言っていた。

(だけど、だからもう終わりにしよう)

深い呼吸を繰り返しているその眠りは穏やかなようで、起きる様子はまったくない。目元の隈はここ一年の間に学生の頃とは比べられない程濃くなっていた。心なしか頬も痩けたし、回された腕にも力が無かった。
私は再びベッドへ近付くと、文次郎の左手を慎重に取り上げて、その薬指にはめられたシルバーリングをゆっくりと抜き取った。実質十秒もかからなかった動作なのに、まるで百メートルを全力疾走した後のような疲労感が一気に押し寄せてくる。私はリングを握り締めたまま、思わずその場に座り込んだ。
心臓がうるさい。知らずに息が上がってきて、背中に冷たい汗が伝う。ぼんやりと、人を殺したらこんな感じなんだろうかと考えた。それは冗談なんかじゃない。今まさに、私は恋人だった文次郎を殺そうとしているのだから。



栓を抜いた


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