<ギフト>

雪男は、双子の兄・燐を訝っている。
何をと言われると、うまくは説明できない。
ただはっきりしている事がある。

「兄さん、これから任務に出るから、今夜の夕飯はいらないよ」

土曜日の夕方のある日、これから夕飯の支度に行くであろう兄さんに告げる。
扉に向かって歩き出した兄さんが振り返る。

「あ、マジで?朝飯は?」

「ん〜・・・多分、食べれないんじゃないかな。もし早く帰って来れたら、何か買ってくるよ」

「そっか、わかった」
そう言って、兄さんは扉に行くのを止めて、自身の机に置いていた、僕のSQを手に取りベットへ戻った。


これなのである。

以前は、任務があるというと「一緒に行かせろ」や「頑張ってこい」が最初にあって、表情も一緒に連れて行ってもらいたくてソワソワしていり、寂しがったりしていたのに、最近ではそんな素振りは無く、食事の心配をしてくる。
今までは、食事が食べれないような時は、冷蔵庫で保存してあったのに、急にどうして聞いてくるようになったのか、先日聞いてみた。

「だって、食材もったいないだろ?食べれなかった時の」

という尤もらしい答えだった。
だけれど、仮に食べられなかったとしても量によっては、僕は二食分食べるし、兄さんだって残すのは勿体ないと言って、次の食事を抜いて食べたりしていたのだから、この答えは納得がいかなかった。

騎士團の制服に腕を通し、任務へと行く準備をする。
「じゃ、兄さん行ってくる ね」
鍵を使って、扉を開ける。
「おぅ、気をつけてな。いってらっしゃい」
寝転がっていた兄さんが上半身を起こして手を振ってくれるのを確認すると、僕は扉を締めた。



扉を締めて10分経っただろうか。
僕は扉を締めた場所から1歩も動かずその場にいた。
この場所にいるのには、全く意味はない。
雪男の顔を知っている者がいない、学園から離れた場所であれば何処でもよかった。
時計を見て、10分経ったのを確認する。
この程度の時間なら、忘れ物をしたと言って部屋に戻ってもおかしくない時間だ。
ドアノブに寮の部屋直通の鍵を差し込んで、扉を開けた。
すると、そこにはさっきまでベットに寝転んでいたはずの兄さんがいなかった。
自分の夕飯を作りに行ったのかと厨房に行ったけれど、姿は見えず、どういうわけかウコバクの姿も見えなかった。
トイレや風呂掃除かと思い、行ってみたがやっぱり姿おろか気配すらせず、寮全体を一通り見回ったけれど、状況は同じだった。
監視役の僕とシュラさんがいない時は、寮に留まっておくのが決まりになっている。
シュラさんは今日は任務で学園から離れている。


兄さん・・・一体どこに?


午後10時、兄さんの帰りを待って6時間経った。
部屋の明かりは点けていない。
時間を明るく報せてくれるケータイを握りしめる。
後方からドアノブが回し扉が開く音がした。
あ〜ぁ、と欠伸が聞こえ、同時に部屋に明かりが灯った。

「遅かったね兄さん」
欠伸の主に声をかける。
「えっ!雪男っ!! な、なんで?」
予想してなかった状況に兄さんはとても驚いたようだった。

「それはこっちの台詞だよ。なんで寮にいなかったの?」
「い、いたぞ。ちゃんといたっ」
「・・・嘘をつくっていうの?」
「う、嘘じゃないぞ」
「・・・そう、嘘を突き通すつもりなんだ」
僕はそう言うと、椅子に座ったまま机の一番下の引き出しを開け、引き出しにすっぽりはまる大きさの箱を取り出した。

「口で聞いても答えられないのなら、体に聞くしかないないよね?」
箱を持ちそう言って振り返ると、顔色を変えてびくりと震える兄さんがいた。





ブブブブブ・・ブーン・・・



「あ、あぁっ!・・んっ、ふっく、はぁっ・・・っ」
部屋には幾つものバイブ音と、少年の切なく鳴 く喘ぎ声しか聞 こえない。

「ゆき・・あっ・・はなしっ・・・って!・・・はぁんっ」

対悪魔用の拘束装具で後ろ手に縛られ、膝を立ててうつ伏せに床に寝かさた燐。
後ろには、脚が閉じられない様に、燐の椅子と雪男の椅子に片方づつ固定され、どす黒い色をしたバイブが入れられている。
バイブが抜け無いように、しっかり医療用テープで止められている。
椅子には重しを置かれているので、そう簡単には動かない。
胸には、ローターが貼付けられている。
前は、達してしまわないようにしっかりゴムで塞がれ、尿道バイブが差し込まれている。その上に電動オナホールが強烈な刺激を与え続けている。

「ぃやぁっ・・・ぐすっ・・・あぁっ!・・・ひゃっ」

よほど刺激が強いのだろう。燐は涙をボロボロと流しながら、無理な姿勢を取らされているのに関わらず、ビクッビ クッと海老反りなったり、丸まったりしている。


「兄さん、言う気になった?」
雪男はそんな燐を見ながら、顔色を変えずに問う。

「ふっ、あっ!ああぁっ・・い、いた、りょっ・・にっ・・いたっ!・・ぐすっ」
唇を噛み締め、刺激に耐えながら、なんとかして答えようとする。

「兄さん、本当のことを言わないと、もっと酷い事をするよ?」
「あっ・・・いや・・・ん、だっ」
「僕は寮の中を探しまわったし、フェレス卿にも連絡したんだ。そしたら、なんて言われたと思う?」
「ぐす・・ん、くっ・・・わ、わか・・・ない・・あぁっ」
腕を組んで、床に這いつくばる兄を無表情で見下ろす。

「『奥村君の失踪は問題ありません。こちらで把握していることです。先 ほど奥村君から連絡がありました。ご安心してお待ち下さい』だって・・・どういうことなのかな?兄さん」
雪男の声が1トーン下がったような気がした。


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