終わりの予感





その日の夕暮れ前、
あたしは光牙を探していた。

少しだけ、あいつと話したい気分だから。

「やあ、光牙くん。
 気分はどうですか?」


夕日と海が一望できる崖の上で、彼は一人たそがれていた。
その姿をからかうように、あたしは声をかける。


「ホタルかよ・・。
 べつに、よくないよ」
「そんなものだよ、人生なんて」


よっこいしょと、おっさん臭い掛け声で隣に座る。
海から吹く風が、気持ちいい。


「いいねえ、ここは静かで。
 あたしの方はいつも騒がしかったよ」
「そうなのか…。
 ・・・・ホタルは何処から来たんだ?」
「宇宙からだよ?
 プレセペ星団辺りから」

空を指さしてそう言うと、すぐさまつっこまれた。


「嘘吐け!!
 …お前って、いつも話をはぐらかすよな。」
「性分からして嘘つきなもんで。」
「・・・・むかつく」
「褒めてくれてありがとさん」

にやにやと受けてやると、光牙は子供の様に頬を膨らませる。
つん、とそっぽ向いた光牙は少し怒ったらしい。

「あー、もうお前なんか助けなきゃよかった。」
「だったら自分の不運さを呪いな。
 あたしは助けてなんて言ってないし」
「…そうだな。
 俺は、不運だな」


光牙は、珍しくあたしの戯言を真面目に受け取った。
その顔は、浮かない。


「…そんなに聖闘士になるのが嫌?」
「だって、誰かに人生決められてんだぜ?
 しかもわけ分かんねえし。
 誰も聖闘士が何なのか、アテナなんて本当にいるのかとかも教えてくれねえし。」

要するに、だだこねてるだけってわけだな。
まだまだ子供なんだね…。
しょうがない、先輩が教えてあげましょうか。
沙織との約束破らない程度に。


「あのね、聖闘士っていうのは自分の信念を貫き通すやつのことだよ」
「信念?」
「そう。
 小宇宙を燃やし、ただただそれだけを信じて突き進む馬鹿な奴らの事。
 少なくとも、あたしはそう思ってるよ」


あたしも、その一人だけどね。


「そう、か。」
「後は、時が来ちゃえばすぐにでもわかるよ。
 嫌でも、ね。」
「は!?
 どういう意味だよ!それ!!」

あたしは、光牙にこれ以上きかれないうちに
テレポートで家まで飛んだ。


「凪の時間は、もう終わりかもね。」


どうにも嫌な予感がする。
ドキドキと心臓を這うような、嫌な感じ。
あたしの嫌な予感は、外れたことないから嫌になる。






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