アテナの決意




あたしはテラスから、水平線に沈みかけた夕陽を見る。
どうも嫌な予感がする。

「変なことに、なんなきゃいいんだけど…。」

今は、まだ十分には戦えない。
タナトスとの戦いで使いきった小宇宙はまだ十分の一も回復していない。
体の方も、普通の生活しててもきつい位だから戦う事なんて無理。

要するに、今のあたしは一般人と大して変わらない。


「どうかしたのか?」
「シャイナ。
 いや、少しだけ嫌な予感がするんだ。」
「嫌な予感だと…?」

夕暮れが、闇に変わる。
この瞬間こそ、一番恐ろしいんだ。


――



「ッ!?」

太陽が水平線の落ちたと同時に、重苦しくて、感じてて気分の悪い小宇宙唐突に表れる。
辺り一面に重くのしかかる。


「来たか…」

ぽつり、と呟いたシャイナはこの小宇宙が誰のものか知っているのだろう。
テラスに出たアテナも頷いた。

「ええ。
 ホタル。
 あなたを巻き込む訳にはいきません。
 どうぞ、下がって下さい。」
「残念でした。
 下がれって言われて下がるほど昔から素直じゃないんだ。
 一応、あたしも聖闘士だし。」

アンクレットの形となった聖衣を見せる。
こっちに来た時、身に着けていた聖衣はパンドラボックじゃなくて石になった。
蒼くて、深い綺麗な色…アホ師匠の髪の色を思い出してならない。


「でも、あなたは怪我人です。
 小宇宙だって、全く回復してないでしょう?」
「…一矢報いる程度の事は、出来ると思うけどね。」


図星をつかれて、思わず間が出来る。
その間を聞き逃さなかった。

「なりません」


きっぱりと断られた。
…アテナは頑固だからひかないだろうね。


「今、ここで戦っても何も変わりません。
 お願いです。
 今は動かないでください。
 未来のために…。」
「・・・・分かったよ、アテナ。
 その代わり、これの後はあたしの好きにさせてもらうからね。
 どんなことしても、もう文句は言わせないから。」
「ええ、好きに暴れて下さい。」


アテナはいい笑顔をあたしに見せる。
その姿は、何百年たっても変わらない、毅然とした美しさが漂っていた。


「アテナの頑固さには、昔っから変わらないみたいだね。」
「そのようですわね。」


くすりと笑うとアテナはあたしに背を向けた。、
あたしは、黒い神の元へ向かう気高い女神の後ろ姿をただ見つめた。

なにも出来ない歯がゆさをあたしは、ただもてあました











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