01


満月の夜。
私は なまえ と酒を飲んでいた。




「やっぱ、セージ様でしょ。
ハクレイ様もかっこいいけどさぁ。」






酒のせいか、ほんのり赤く染まった頬は普段とは違う、女としての色香を醸し出していた。






「お前のその師匠至上にも段々磨きが掛かってきたな。」




「なんだよー!シオンだって同じようなもんだろ!?」




「お前と同じするな。」






相変わらずのふてぶてしさにも酒の影響で拍車がかかっている。
ここまで、黄金聖闘士に酒の勢いでも突っかかれるのはそうはいないだろう。


まして、普段ですらこの態度なのだから、ある意味ですごい。







「シオン。」




「なんだ?」





急に、改まったような態度で私の名を呼んだ。
そして、普段では決してみられないような寂しげな顔でこういった。







「シオンとこうしてマニゴルドにも、セージ様にも、ハクレイ様にも内緒で呑むのも、これで最後だね。」





「いきなりどうした。」






最後、弱気な発言や諦めたようなこおを言うのが嫌いな なまえ からそんな言葉を聞くとは思わなかった。





「あたしね、明後日の朝方ここをでる。」




「………とうとう、お前も出陣か?」




「うん。
マニゴルドと一緒にね。
あたしから直談判したの。」





「何故…?
お前は最前に立つべき聖闘士ではないはずだ。」








自分の声が、ひどく震えているのがわかる。
胸に、微かな焦りを感じた。








「あたしね、師匠…マニゴルドを一人で行かせたくないの。」





「……。」





「あの人のことだから、大丈夫だってコトくらいよくわかってる。
でもね、やっぱり駄目なんだ。
あの人に、おいて行かれるのだけは嫌なの。」





自嘲気味な、作り笑い。
寂しさをこらえた、精一杯の笑顔。




「……… なまえ 。」




「シオンの言いたいことも、分かってる。
あたしの、ほんとに性もない我が儘だってことも、多分もうここには戻ってこれないことも。」





ふと、 なまえ が空を見上げた。
雲一つない、満月の空。






「星、見えにくいね。」





「 なまえ。 」





「ん?」





星を見上げたまま、こちらをみない なまえ 。
私はその姿を見据えながらいった。






「私は、お前が後を追って死ぬのは認めない。」




「…………。」





「だから、必ず帰ってこい。
その時は、私がしっかり送り届けてやる。」





「…………じゃあ、もしもあたしがここに帰ってきたときにあんたが死んでたら、
そのときは、どんな手を使ってももう一度殺してやるから。」






なまえ が不貞不貞しい笑顔をたたえたままそういった。


















それから、あいつは聖域から出て行った。
敬愛してやまない師匠の後をついて行って。





それから、しばらくたったある日、マニゴルドから教皇の仮面を受け取った。




後は頼んだ、そういわれた。





教皇の仮面はもどってきても、あいつが戻ってくることはなかった。









そして、









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bkm
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