竹くく(忍ミュネタ)

※忍ミュで竹谷が兵助に「あーん」をしているのを見かけて///
ミュを見てなくても大丈夫ですが、バレが一部あるので注意






「お、八左ヱ門。おはよ」
「おう。あ、今日のメニューなんだ?」

食堂の入り口で遭遇した兵助の手にはすでに盆が乗っていて、ひょいと覗き込みメニューを確かめる。こんもりと盛られた米はつやつやとしていて、柔らかい匂いに腹の虫が威勢のいい声を上げた。

「ご飯と汁物と、あとは竹輪」
「竹輪かーあんまり力出ねぇな
「まぁ、元は魚だけどな」
「そりゃそうだけど、けど、もっと、こうさぁ、がつんとしたもの食いてぇな」

俺の言葉に苦笑を浮かべながら兵助が突っ込んでくる。

「けど、八左ヱ門の所、今日は座学だろ」
「おぅ、こんな晴れた日に最悪だよなぁ」

そうぼやいた俺に、兵助は「そうか?」と首を傾げた。文武二道とはいえ、どちらかといえば座学の方が好きなんだろう。俺が「どうせなら外、走り回りたいじゃん」と付け足せば「まぁな」と答えてはくれたものの、彼はどことなく理解しがたいといった面もちをしていた。

「今朝は込んでるな。もうちょっと早く来ればよかった」

並んでいるお盆の中から一番たくさんご飯が盛られていそうなものを選んでいると、そんな呟きが背後から聞こえてきた。一応の幅はあるものの食事の時間帯は決まっていて、込み合って満席になっていることもある。二人で並んで、もしくは向き合って座ろうとするのは中々、至難の業だった。だから普段は先に食堂に着いた方が席を取ることにしているのだが。時々、こうやって二人して出遅れることがある。
振り向けば、兵助の言ったとおり、今朝も今朝とて賑やかな声があっちこっちで響いていて、二人掛けができそうなところはなさそうだった。ぽつん、ぽつんと一人掛けが空いているのは目に入ったが、俺はもちろん兵助もまたその場から動こうとしなかった。

「あ、あそこ、空いた」
「お、ラッキー」

ひょい、と背伸びした足を地に着けた兵助は、お盆を手に食堂の奥を目指す。その背中を追いかけると、ふ、と席で固まっている土井先生が視界に入った。そういえば、と再び目の前の竹輪に目を落とす。さほど好き嫌いがない自分からしたら、固まるほど嫌いな食べ物があるという気持ちはいまいち分からねぇ。

(けど、昔から偏食気味の兵助は土井先生の気持ちが痛いほど分かるって言うからなぁ)

よく見かける光景を素通りし、いつものように兵助の隣に盆をおろし、手を合わせる。ぱちん、と音が俺たちの間で響いた。それを合図に感謝の気持ちを告げる。「いただきます」と。命を頂くことに感謝しながら、箸を汁物に付けていると、不意に兵助が俺の方を覗きこんだ。

「なぁ、今日の汁の具って何?」
「んー葱と、おっ、豆腐。兵助、食う?」

ぐるり、とかき混ぜれば、ふわっと白がそこに浮かんだのが分かった。俺が告げた途端、「え、いいのか?」とぱ、っと兵助の目が輝くのが分かった。相変わらず豆腐が好きだな、と心の中でこっそりと呟くきつつ「おう」と頷く。

「ほら」

俺は汁椀の中に箸を突っ込んで掴んだ豆腐を、兵助に差し出した。柔らかな弧を描いた唇が「あー」と開いて-----------そのまま箸に重みが掛かる。満面の笑みに、こっちまで何だか倖せな気分になってくる。

「うまいな」
「よかった。あ、なら、豆腐、全部、やるよ」
「え、いいのか?」

さらに輝く笑みに「おぅ」と頷けば、じゃぁ、と兵助が突然箸で竹輪を半分に割り出した。

「お返しに竹輪、八左ヱ門に半分やるよ」
「え、けど、それじゃ兵助のやつが」
「いいって、いいって」

ほら、と差し出された竹輪に「あー」とかぶりつく。いつもと変わらない、おばちゃんの美味しく竹輪。けど、いつも以上に美味しく感じる。
(何か、いいよなぁ)
何が、って上手く言えねぇけど、すげぇ倖せな気がするのだ。こうやって兵助と一緒に飯を食うことができるのが。------------こんな日がずっと続けばいいよな、って思いつつ、俺はまた兵助に「ほら」と豆腐を差し出した。












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