04/25 16:50
アベンチュリン+カーヴェ


アベンチュリン+カーヴェ


 鐘の音が聞こえる。

 すうと目を開く。机の上にはいくつかの遊戯。目の前に座るのは、青年。つま先まで美しい、女性的な美を持つ、明らかな、男性。白いシャツとスラックスの彼は、きっと普段より身軽な格好だろうと予想した。
「初めまして、僕はカーヴェ」
 あなたは?
「……さあ」
 分からない。ここにいる自分は誰なのだろう。

「言いたくないのならいいさ」
 彼は鮮やかに告げる。
「何がどうであれ、あなたの立ち位置はきっと僕には分からない。それは互いにとって明白な事実だ。さて、僕はこの周辺にある遊戯をひとつも知らないのだけれど、あなたは分かるかな?」
 饒舌なカーヴェに、僕は少しならと答えた。

 カードゲームをしながら、カーヴェは様々な話をした。なんでもない話なのだろうが、仕事へのプライドや、人の期待に応えたいこと、そして同居人への愚痴など、本当に様々な日常の切れ端を教えてくれた。
「あなたが喋りたくないことは喋らなくていい。ただ、この交差点を少しでも無為にしたくないのは、僕だけの感情論さ」
 たとえば、この人が星神から加護を受けていたら。

 否。

「どうかしたのかい?」
 彼は違う。

・・・

「消えたか……」
 カーヴェはぐっと伸びをする。カードを置いて、グラスを撫でた。ここがどこかは分からない。でも、この酒場のような場所で、彼は半透明だった。青年が誰なのかも分からない。だが、未練は見えた。カーヴェは幽霊だとかいう霊的なものはあまり信じていないが、きっと彼は思念だったのだと思う。そもそも、ここにいるカーヴェ自身も思念体なのかもしれない。
「帰ったら、今日の夕飯を作ろうかな」
 夕暮れの実にかぶりつきたい気分だ。カーヴェはくあと欠伸をした。



prev next






- ナノ -