お題小説二つ
ついったの診断で出たキスのお題に合わせて二つ程小説書いたのでぽーいっ。



「ねえザヴァ、おやすみのキスして」


眉尻を下げ、泣きそうな顔をしている中年なんて誰が喜ぶだろうか、とオリは思いながらザヴァの頬に手をやり、そう要求する。
一度かぶりを振ったあと、いつもの、いや、いつもよりも真剣な顔付きになって、ザヴァはオリに近付いた。
ちゅ、と唇の落とされた場所は、口では無く、口の端だった。
きょとん、とするオリにザヴァは困ったように笑う。
透けているオリにキスはおろか触れることも叶わないのだ。

ああもう足が消えかかっている。


「別れの時なんて、こなければいいのにな?」


少女は男の腕から消えた。








「ん…?」


鼻を啜る音が夢の中で聞こえた気がして、シェイマスはゆっくりと目を開いた。
隣に眠っている筈のディアナは上半身を起き上がらせている。
白に近い金の髪が、月に照らされ言葉に表せない程美しかった。


「ディアナどうした…?」


ああ声がかすれている。寝起きとはこんなに喉が渇くものだったろうか。


「ウィリアム…?ウィリアム、いる?ねえ、そこにいるのよね?ねえ、ねえ、お願い。私の前から居なくならないで…」


手が暗闇の宙をかく。
どうもディアナは夜目がきかない質らしく、月明かりだけでは人の判別もつきにくいようだった。
そして時々、俺が居なくなる夢を見てはこうなることがある。
俺が仕事を辞めさせられる時は必ずと言っていい程だ。

そして、俺は毎回彼女を抱き締め、そして喉に口付け引き裂いてやろうかとでも言うような声で脅すのだ。


「大丈夫だ、傍にいてやるから。ずっと」


呪うように、喉を舐めた。



2014/05/04
03:02 Sun
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