2.幸村side

昨日、あれから家に着いて一番初めにしたことは恋人への別れの連絡である。
戸惑いは何も無かった。何故なら彼女への感情が無かったからだ。
向こうも向こうでアッサリしていて、そっかわかったと二つ返事で泣きも喚きもせずに俺たちの関係はあっけなく終わりを告げたのであった。

日付が変わる前のベッドに入ったが、別れた恋人のことではなく、昔は仲が良かった幼馴染の事を考えていたらいつの間にか夜が明けていた。

仕方がないので何時もより早めに学校へ行くことにした。朝練も今日は自主練だが、どうもそんな余裕はないので真っ直ぐ教室へ向かう。


朝早いせいかまだ誰もおらず、しんと静まる教室で無意識のうちに幼馴染の机の元へ行き、椅子に座って外を眺めた。

風がすごく気持ちいい。



暫く眺めていると生徒が疎らに登校してきた。ちら、と時計を見ると始業20分前であった。

自分の席へ着こうと考え、ふと窓の外に視線を落とすとみょうじの姿が見えた。

「柳・・・?」

みょうじの隣にいるのは間違いなく、同じ部活の柳だ。なんで一緒にいるんだ?俺が昨日登下校断ったから?男なら誰でもいいのう?黒い疑問が脳みそをぐるぐる回る。

しかも今、頬にキスしているように見えた。付き合ってるの?なんで赤くなってるの?なんで柳は頭をなでているの?ムカつく。なんでかわからないけど。

無意識のうちに凝視していたらまさかのみょうじと目があったが合わせる顔なんてないので、ふい、と自分の机へと向かった。




暫くするとみょうじは深妙な面持ちで教室へ入ってきた。

「みょうじ。」

空かさずみょうじの元へ行き、腕を掴むとビクッと驚いた様子でこっちを見てくる。あれ?こいつこんなに腕細いの?

「幸村、どうしたの?」

「みょうじってば柳と付き合ってるの?」

びっくりした様子で、え?とかなんとか言ってるけど答えなんて決まっているんだから早く言えばいいのに。馬鹿なの?


「付き合ってない、けど」

「けど何?」

「幸村怖いよ」


ハッとした。
そういえばみょうじの目を見て話すのなんて久々だし、久々なのに、話した内容がコレって。滑稽すぎる。


「怖がらせたなら謝る。ごめん。ゆっくり話がしたいんだけど、今日学校終わったら一緒に帰れるかな?」


何度も断ったみょうじからの登下校の誘いを、まさか、自分からするだなんて。
今日の俺はなんだか俺じゃないみたいで。訳が分からなかった。




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