天と地の差

「幸村!一緒に帰ろう!」
「あ、みょうじ。約束あるから」

ごめん、と一言添えて足早に教室を出て行く幼なじみの幸村精市。


約束の相手とはきっと恋人の事である事は容易に想像できるのだが、納得がいかないのは私が幸村の事を好きだからである。

幸村という人間は「神の子」と呼ばれるほどそれはそれはもう何をやらせてもやらせなくても完璧な人間で。
だからなのかクラスでは皆尊敬の眼差しで幸村を見ているから良い意味で浮いているし、部活動では幸村が座って見ているだけで部員が凍り付く程の緊張感を与えられる存在である為、皆平等に接してくれないのだ。

そんなだから同年代の人間と一緒に居ることが少なくなる幸村は精神的にも肉体的にも自分と近い人間、即ち年上の人との関わりが増え、割と幼い頃から年上の彼女が絶え間無く居たのである。

一番長く付き合っても三ヶ月。けれども数えきれない程の人と恋人になった私の思い人。

幼い頃から一緒に居るので好きになった瞬間の事なんて覚えちゃいない。記憶のある時から、もう、幸村のことは男として大好きだった。昔は幸村じゃなくてちゃんと精市、と呼んでいたのだが幸村に最初の彼女が出来たその日に名前で呼ぶのを止めた。

一緒に帰るのを断られた私は行き場がなく仕方がないので窓際である自分の机の上に、よいしょと声を漏らし腰掛けて外を見る。タイミングが良いのか悪いのか、幸村が彼女のものであろう高そうな車の助手席に乗り込む所が見えた。


汚い感情が内臓を渦巻くのが解った。





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