むにゃむにゃ…。 「……し…!」 ん…、そんな照れるなって、さあさあ近う寄れ、くるしゅうない… ああっ、サクラさん、これは別に浮気なんてものじゃ…ぼくは一生サクラさん一筋に決まってるじゃないですか…んん、やきもち妬いちゃってかわいいなあ…、こらきみたち、ぼくのために争うのはよしてくれ…よ…へへ…ほらほらもう、女の子が首根っこ掴んでわめいたりするもんじゃないだろう? くるしいって…ん、ちょ、っと…! ほ゛んとに、ぐるじ……… 「もろぼしいーーっ!」 ぱちっ。 見開いた目の前にいたのは、すごい剣幕で自分の名前を叫ぶ――――……凛とした黒髪の美少女だった。 (1) 「えっと…………。誰だっけ、きみ?」 一瞬驚きはしたが、しゃべりはじめるとやはり口元が緩んでしまった。 だって、いろいろな疑問は置いておくとしても朝から好みのタイプど真ん中の女の子に馬乗りにされて目覚めるなんておいしいシチュエーションはなかなかない。 「馬鹿か! 僕だ!」 「自分のこと僕っていうの? かわってるねー、きみ」 怒った顔もかんわいい〜っ! でも声がなんか誰かに似てるよーな…と思っていたら、彼女の口からとんでもない人物の名前が出てきた。 「寝ぼけるな! 僕は面堂終太郎だっ!!」 「……は?」 「はやく元に戻さないとただでは済まさんぞ!!」 「…………は?」 「とぼけるんじゃないっ!」 「おわっ」 目の前に落ちてきた刃を条件反射で白刃取りする。 「え、と……。とりあえず、冷静になろうよ?」 「…この状況で冷静でいられるとでも…?」 「えっとさ。ひとまず、きみ、名前は?」 「だから、面d――」 「面堂、の、妹さん? ああ〜、うんうん、確かにお兄ちゃんに顔似てるね〜!」 「ちがうっ! 僕は面堂終t――」 「へー、面堂って了子ちゃんの他にも妹いたのか〜。あいつ、隠してやがったな」 「おい、聞け! 妹じゃなくて僕が終たr―――」 「友人に隠し事とは。あいつインケンだからな〜。」 「……」 「……」 「インケンとは何だインケンとは!!!」 「君ではない! 君ではなく面堂終太郎というインケンで最悪なタコ男のことだ!!」 「僕が終太郎だと言ってるだろうがっっ!!!!!!!!」 「んなもんホイホイそうですかと認められるか、このタコッ!!!!!!!!!」 (ときめいた俺のピュアな気持ちを返せーーーーー!) ×
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