(5) 「はー。やーっと今日が終わったか。」 終礼のチャイムが鳴り始めたと同時に鞄を持って立ち上がる。 他のクラスメイトもすでに教室を出ている。 全く、つくづく勝手な奴らのそろったクラスだ。 「あたるー今日ラーメン食いにいくけど来る?」 「俺つかれたからパスー」 「あっそ。じゃ明日ねー」 手を振りながら体を伸ばす。 んー、今日は本当に疲れた。 早く帰ってゴロ寝するに限る…… 「諸星っ」 ……うわっ。 下駄箱で俺を待ち構えていたのはこの俺の全身疲労の元凶である女(?)だった。 「何だよ」 「お前のうちに僕のものが届いているらしいから、返せ!」 「返せってまるで人をコソ泥のように言うなよ」 「あたる、お前ーーーーーーーーー」 「うわっ」 突然ぬらりと幽霊のように俺と面堂の間にクラスメイトの男子達が割り入ってきた。 「興味ないふりして私物を盗んでいたとは最低な男だな!」 「男の友情を断って終子ちゃんと放課後デートとは許すまじ裏切り行為!」 「待て! 誤解! だ!」 「終子ちゃん、大丈夫? 最低だよねあたるって」 「誰が終子だ!」 「つれないところも可愛い〜!」 「寄るな気色悪いっ!」 まるで気が違っている。 とりあえず面堂に群がっている塊をよけて下駄箱を抜ける。 「あ、待てっ諸星!」 「終子ちゃん! なんであたるに付きまとうんだよ!」 「ばか誰が好き好んでつきまとうか! 僕は荷物を返して欲しいんだ!」 「こらっだから誤解を招く言い方をするなと言っとるだろうが!」 ……結局俺についてくる面堂、に更についてくる男共を引き連れての帰宅になった。 「ただいまー」 「お邪魔します」 「「「「「「「「「「お邪魔しまーす!」」」」」」」」」」 「あーうるさいうるさい……ん、これか了子ちゃんが送ったってのは」 土間を入ってすぐのところに大きなダンボールがぽんと置いてあった。 「日用品…って言ってたがそんなに何が入ってるんだ?」 「確かに少し大きいな」 不思議そうな顔をしながら面堂がダンボールを開封した。 「こ、これはっ…!」 中に入っていたのは衣類だった。 衣類、といっても、いかにも!なワンピースにドレスに寝巻き……もちろん下着類もだ。 「……確かに日用品ではあるよな」 「……」 女物のブラジャーを持って呆然としている面堂の後ろからにょきにょきと手がのびてくる。 「あっ、おい…」 面堂の手からするりとピンクのレースが取られたと思ったら、後ろの男共の手に取られて引っ張りだこになっていた。 「ばかやろーっ、手をはなせー!」 「おまえがはなせー!」 「はやくはなさないとこの神聖な終子ちゃんのブラジャーが破れて木っ端微塵だぞ!」 「だからおまえがはなせ!」 「いやおまえがはなせ!」 「ばっかやろう!!!!」 ぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽか、とハンマーが小気味いい音を響かせた。 よろめいた奴らの真ん中で変形寸前のフリフリの下着をかすめとってダンボールに入れて急いでガムテープで蓋を閉じる。 「なんっつー恥知らずな奴らだ、まったく!」 床にのされている一人の手が懲りずに執念でこっちに伸びてきたから、足で蹴ってやった。 「……諸星でもたまには正しいことをするんだな」 「お前もむぼーびなんだよ、ばか!!」 ダンボールを後ろ手にしめたまま怒鳴りあげると、心底意味が分からないといった様子で面堂が首をかしげた。 「なんで僕が防備しなきゃならないんだ」 だーーーーーーもう。 本当はこいつにもハンマーひとつ食らわせたいところだが、見た目だけとはいえ女の子に暴力をふるえない。 ……めんどくせー! ×
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