おかしいよね | ナノ











もう、私、病人だっていうのに。何でこんなめに合うのよ。サクラ先生、教師のくせに勝手すぎるわ。
ぶつぶつ言いながら、とりあえず薬を探しに棚を見回る。

「えっと、机の右脇の棚の3段目の右から2番目だったかしら…?」

あった、これかしら。
手に取った瓶には、でかでかと「プロテイン」と書かれている。

「違うじゃない! もう!」

その隣もそのまた隣も、腹痛に効果のあるものでは到底なさそうな薬名だった。
必要があるのかないのかわからないくらい大量に置いてある瓶を、片っ端から全て床に叩きつけて割りたい衝動に駆られる。むしろ棚ごと向こうの壁にぶん投げたい。(まさかまさか、そんな怪力あたしみたいなか弱い女の子には出せないけど!)

「……なんだか、イライラしすぎて腹痛収まっちゃったみたい……」

本当、何のために来たのかしら。可哀相な私……。

ため息を一つついて、踵を返す。

馬鹿みたい。
さっさと授業に戻ろう。せっかく今日の体育は私の好きなバレーボールだったのに。

反転した視界の脇に、カーテンを引かれたベッドが移る。

「……あ」
そういえば……病人がいるからついててくれとか、サクラ先生、言ってたような。

いやだ。どうして思い出しちゃうのかしら。
忘れたままだったらこのまま戻れたのに。

……どうせ寝てるだけだとか言ってたし、忘れたふりして行っちゃおうかしら?

でも、そんなことして、もし何か大変なことになったらどうしよう。私の責任だわ。

でもでも、せっかく今日はバレーボールなのに……

でもでもでも……




――――もう!
どうして私ってこうお人よしなのかしら?
とりあえず、病人が今どんな様子かだけ見ておこう。
あまりにぐーすか寝てるだけだったりしたら、放っていってしまえばいいわ。



寝ているらしいからとりあえず忍び足で近寄って、
「失礼しまーす…」
なんて小声で言いながら、カーテンに3センチほど隙間をつくる。

そういえば、男子か女子かも聞いてなかったわ。
男子だったらちょっといやね…

なんて思いながら見遣った先にあった寝顔は、しかし願ってもない男子のものだった。


「……!」
思わず声が出そうになって、手の平で口を押さえた。



(め、面堂さん…?!)














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