保健室のドアをノックするのは、小学生の頃から緊張してしまって苦手だった。 コンコン。 木製のドアが小気味よく鳴る。 「……あのー」 返事がない。留守かしら? おそるおそるドアに手をかけて開こうとした、その時。 ガラッと音をたてて突然扉が開いた。 「きゃっ!」 そこに立っていたのは、白衣ではなく巫女衣装を纏った保健医だった。 「おお、おぬし! 丁度良かった!私はちょっと行かなくてはならんところができてな。ベッドに病人がおるからおぬしがついていてやってくれ。なに心配はいらん、寝ているだけだからな。」 「あっ、あのぉ、私、お腹が痛くて……」 「それなら机の脇の棚の二段目の右から3番目にある瓶の薬を2錠飲んでおけばよい。」 「えええと、右から2番目の棚の…」 「では悪いがまかせたぞ」 たたたと爽快に赤い裾を翻して廊下を駆ける後ろ姿が小さくなってゆくのを、なかば呆然として見つめてしまう。 「……えええええ?!」 何よこれっ!! |