二十 | ナノ





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「「「委員会費削減!!??!?」」」

「そう大声を出すな。頭に響く……」
「大丈夫ですか?サクラ先生」

上体をよろめかせた教師の隣に滑り込み肩を抱こうとしたあたるに拳骨を落とし、
しのぶは紙コップに水を汲んでさくらの前に出した。
すまない、と言って一気に煽り、空になったコップをサクラが置いたタイミングで、
しのぶがおずおずと尋ねた。

「あのう、削減って……」
「うむ、実は近年我が校のイメージ低下がとみに激しくてな。
入学希望者の激減に喘ぐ校長が打開策として校内美化に注力し始めた。
校舎の老朽化が深刻なことに加え、とかく清掃が行き届いていないと父兄から度々クレームが入っているそうだ。
そこでこの秋校内清掃用具を一新することになった。その手配は全て美化委員の仕事だ」
「え!マジ。ルンバとかダイソンとか買ってくれんのかな」
「たわけ。そんな金があったら苦労はせんわ」
「でも……。うちの学校じゃ、ホウキやチリトリを新しくしたってまともにお掃除をするのは一握りの生徒だけだわ」
「その現状も調査済みじゃ。
清掃用具一新で生徒の清掃への取り組みのモチベーションを挙げ、
ならびに美化委員を増員して監視の目を増やす。
校内のみならず、校門周辺や駅前大通りなどの校外まで清掃範囲を拡大することで近隣住民からのイメージアップも図るというわけじゃ」
「なるほど…」
「うちのヘボ校長にそんな政治力があったとはな…」
「ヘボ校長って、失礼ですよ。委員長」
「そのお話がどうして会費削減に繋がっていくのかしら」
「つまり……他の委員会から削った分の費用を美化委員に集めるってことですか?」

あたるとしのぶが間の純一郎を同時に見た。

「まさに。しかし、全委員会から同額だけを削減するというわけではない。
校長裁分で、学内貢献度の低い委員会からはより大きな歩合で削減されるようになっている」
「ほう……して、風紀委員はいかほど」
「非常に言いにくいのだが、風紀委員は削減率ダントツトップでこの秋より70%削減じゃ。」
「「「なっ……???!!!!」」」

三者三様に言葉に詰まり、声にならない声が同時に出た。

「なんでうちがビリなんですか!サクラ先生!!」
「仕方あるまい。体育祭でハンマーで殴られたたんこぶがまだ校長の頭には残っておるのだ……」
「それはあたるくんが勝手にやったことで、私たちは何も知らなかったのよ!?あんまりです!先生!」
「そうですよ!!委員長だけ削減してください!いっそ委員長を罷免してください!!」
「コラッ小泉どさくさに紛れて俺を売るんじゃないっ」
「仕方ないわあたるくん。会費が70%も減ったらまともな会誌の発行もできなくなるし風紀委員の腕章もボロボロで何年も使い続けなきゃいけないし……。私も本当につらいけど涙を呑んで委員会費を選ぶわ。あたるくんごめんなさい」
「え待って?俺本当に捨てられるかんじ?」

「おぬしら落ち着け。諸星が今委員長を降板したところで費用の割り振りは変わらんぞ。すでに決の済んだことじゃ」

「余計落ち着けませんよそんなの…」
「どうしてうちが?なんで?どうして?」
「落ち着けしのぶ」
「ちょっと触らないでくれるあたるくん」
「えっ」
「先生。何か手はありませんか?」
「さすがに校内トップ会議の決定事項だ。できることはないだろう」
「……。先生って、保健委員と兼任されていますよね。」
「そうだ。ついでに言えば、この度くだんの美化委員もワシの管轄になったぞ」
「……」

あのう、たとえばですけど。

唇に握った手のひらを寄せ、しゃべりだした純一郎の
声に耳を澄ませるように両隣の上級生と向かいの教師は頭を寄せた。




















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