5 校門を出たところで、自転車にまたがった学ラン姿の先輩に出会った。 「お、純一郎じゃねーか」 「藤波先輩」 「また小間使いかあ?」 「バカ委員長が、サインペン買ってこいって」 「サインペンくらいうちの購買で売ってるぜ」 「……いうのはタテマエで、『ついで』のヤンマガのグラビアがAKBの推しメンらしいです」 「ぐらびあぁ?全くアイツらしーぜ。……後ろ乗ってくか?」 「いいんですか!」 先生に見つかると怒られるらしく、せかせかと後ろに飛び乗ったら途端に自転車は発進した。 藤波先輩は委員長たちの去年のクラスメイトで、特にしのぶ先輩とは親しいらしく二人でいるのを時々見かける。まるでカップルのようにお似合いの美男美女……に見えるのだが、藤波竜之介先輩は歴きとした女子である。 「どこまでだ?」 「向こうの四つ角のローソンまでお願いします」 「ほいよ。」 「ありがとうございます、助かります。」 「いーってことよ。すぐだし。」 軽快な走行で、景色は線になって過ぎてゆく。 あ、下校中の生徒の買い食い発見――――といっても、こちとら二人乗りなんて校則どころか法律違反だ。注意なんてできたもんじゃない。 「そういえば、先輩達ってみんな去年同じクラスだったんですよね」 「諸星とかのことか? そーだけど」 「しのぶ先輩も、諸星先輩も、白井先輩も?」 「そーだよ。」 「……すっごい濃いクラスじゃないですか」 「もー大変だったぜー。まともな授業やった覚えねーもんなー」 「で、ですよねえ」 チリンチリン、おーおっちゃんちっとそこどいてくんなあ、と言いながらすいすいと、商店街に溢れる春の昼下がりのゆったりした人々の間をすり抜けてゆく。ずいぶんと慣れた二人乗り走行だ。 もちろん、彼女も去年の2-4の“濃いクラス”たる所以のひとりであったのだろうことは、否めない。 |