2 桜の降る季節だった。 「……『純一郎』?」 つま先から頭のてっぺんまで、無礼な視線に舐め回された。嫌な男だ。この瞬間に自分の中での彼の位置はほぼ確定した。 「で、何。転校生だって?」 「委員会所属が義務だということで、空きのあった風紀委員に入ることになりました。」 「ふーん」 「ふーんじゃないでしょ!」 横に立っていたしのぶ先輩が彼の頭を軽く(見えたが実際はものすごく痛いのだそうだ、)殴って自分に向いた。 「えっと、純一郎…くん、よろしくね。珍しい名前なのね」 「親の趣味で……」 「一体どんな趣味の親だ」 「あんたは黙ってなさい!」 二度目の鉄裁を食らって呻きながら頭を抱えた委員長を華麗にスルーして、「じゃあとりあえず……これだけやってもらえる? 明日の校内アンケートの質問内容、ほとんど決まってないから頼んでいいかしら」とにっこり笑って書類を差し出す、彼女の背中の窓の向こうで薄白の花弁がひらひらと舞っていた。(しのぶ先輩には敵わないと確実に理解したのもおそらく、この瞬間) |