(3) 「よし、朝のHR始めるぞー。席着けー」 戸を開けた瞬間からどこかおかしいことに教師は気が付いていた。 「今日は静かだな。……諸星は休みか?」 「まだ来てません」 「休みか遅刻か…。どっちにしろ平和だな。あとは…」 教室を見回す。空席は2つだ。 「面堂もいないな」 通りで、と、教師は思った。あの2人がいないことでこうもクラスの雰囲気が変わるものなのか……つかの間だと分かっている今現在の平穏が惜しい。 「ええと、では2人は欠席と……」 「待たんかっ!」 ガラリ! と扉が開かれると共に面堂終太郎の声が教室に響いた。 「面堂。諸星はまだしもお前が遅刻とは珍しいな――…ん?」 教師が振り向いた先には諸星あたるの姿しか見当たらない。 「面堂の声がしたかと思ったが……諸星だったか。似てきたなあお前ら。早く席につけ諸星」 「馬鹿! 諸星のアホと一緒にするな!」 「んんん〜?」 やはり聞こえる諸星あたる以外の男の声に、教師は目を凝らした。 ……諸星あたるの横にいる見かけない女生徒が喋っているように見えるが…。 「えー…」 コホン、とひとつ咳払いをして教師は平生の笑みを作ろうとこころみた。 「では出席を取る! 諸星くん!」 「はい」 「面堂くん!」 「はい」 答えたのはどう見ても女の子である。 教室中の人間もぎょっとして彼女を見ている。 「……面堂終太郎くん!」 「はい!」 「…………」 「……そういうことだ、温泉」 無理に作ろうとして引きつったの笑みまま硬直している教師と唖然としているクラスメイトを尻目に、諸星あたると面堂終太郎(自称)は自分の席についた。 「ちょ…っと待て、諸星…と、面堂。説明を…」 「説明することなどない。起きたらこうなっていた。それもこれも全部諸星のせいだ」 「だーかーら俺は何も知らんと何度言えば分かるんだお前は!!」 「こんなことするのは諸星以外にいないだろうが! いい加減しらを切るのはやめてもらおうか!!!」 「なにがかなしゅーてお前を女にせなならんのだ、馬鹿者!!!」 「かなしいのはこっちだ、アホ諸星!!!!!!!」 「おまえら、教師そっちのけで喧嘩を始めるんじゃなーーーーい!」 ×
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