森と君と | ナノ
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 7.私の終わりはあなた


 来客を知らせるベルがなり、セイは、固まっていた体をようやく動かした。
外では、楽しげな曲が流れている。楽隊も来ているのだろう。

来客を覗こうと立ち上がり、扉をゆっくり開けて元いた部屋に戻るとどこに行ったのか、ドゥロロはいなかった。すぐにその奥の、店の方の話し声に気がつく。客にはすでに、母が、応対しているようだ。

店のたくさんのテーブルの隙間を縫うように入り口に出てきて、それから、何かを真剣に話していた。客は誰だろうか。この場所からは死角で見えない。ソファーを通り、クローゼットの近くに腰を屈めて、そっと覗いてみる。

どうやら、男だった。背が高い。くたびれたドレスシャツを着ている。しかも、彼を、自分は知っているのだと、直感した。
もしかしたら、彼とは、あの場所で会っている。

「帰って! すぐに帰ってください!」

母が怒鳴るのを聞いた。
滅多にないことだったので、何かがさあっと引くような気持ちだった。
不気味。何かが、不自然。男は、にやにやした顔で、母に言う。

「役所で調べてみたら──……、──……ですので、そちらに、いらっしゃるのではと思いましてね」

細かいところが、聞こえない。聞きたくないのかもしれなかった。悪い予感がした。ここから、身を乗り出すと死んでまうような気がした。張り付いたように動けない。

「そんなの、居ませんし、いきなりなんですか、迷惑です」


彼女は、嘘が得意でない。取り乱しているのがわかった。だからといって、自分が出ていくことは、おそらく出来ない。

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