▼ 7.私の終わりはあなた
瞳に散る、橙の光。それに、ドゥロロは覚えがあった。彼の左足を見やると、いつの間にか、自然に馴染み、動いているのが見てとれた。しかしこんなに早く、まるで、体の一部のようになるのは、通常では無いことだ。それは、ズボンの下から、皮膚に見えたり、木肌に見えたりを繰り返す。
「……でも、まさか、そんなことが──」
震えた声で呟いたドゥロロに、セイは感情の無い声でただ、告げる。
「──おい、答えは、まだか?」
「……答え、って」
獲物を見る目。定めるための眼。じっと、こちらを伺う表情。口端から見え隠れする牙。それでも、怖いと思わないのは、自分がどうかしてしまったからだろうか。
少しだけ、その視線に当たるだけで歓喜が身体を巡るのでは、やはり、自分が狂っているとしか、思えなかった。
「ないよ……そんなの。 少し、お墓参りに行っていた、それだけだ」
語尾が、心なしか、不安に揺れた。しかしドゥロロははっきりと言い切った。
「墓……この国には、死者を弔う風習は、薄いだろう」
少しだけ、落ち着いた低めの声で、セイは聞いた。
命は森に還る。だから、森に納められて、それだけだった。そうする人が、多かった。立派な、あの森の糧に、なりますようにと願えば、あとは、悲しんではならなかった。
「……それでも、あそこには、ひとつだけ、あるんだよ。偉大な魂の眠る、美しい墓が」
セイは、神殿のような場所を思い出した。じっと、ドゥロロを見詰めたまま、少し考えていた。
ドゥロロはゆっくり瞬きして、言った。
「我らが母――みたいなね」
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