森と君と | ナノ
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 6.蒼い水を溶いた花

夏の中頃だけあって、夕方に向かって暮れ始める空も、冬に比べまだ明るい。

カフェから外に出たセイは、そこで、初めて見たもののように、まじまじと、数日前から、店の前の壁に貼ってあった貼り紙を見つめた。さっき、入るときにも目にしたものだ。

この辺りは、街中での落書きこそ禁止だが、貼り紙に関することは、あまり決まっていない。誰でも自由に貼っていくので、誰かが貼ったものらしい。それは、今年の秋の祭りの告知だった。


森を遠巻きに基準にして、過ごしてきたこの町では、年に二度、おまつりが開かれる。夏と秋だ。詳しい意図は、わからない。

しかし、いちいち由来など気にしない者がほとんどで、要は楽しめれば良い、という感じである。

聞いたところでは、あちこちに焼き料理がならび、木の実が捧げられ、どこかに、数日、月光に当てていた水と、日光に当てていた水が撒かれ、火が焚かれるようだ。そこになんの意味があるのか、とセイは気になっている。

この存在を知ったのは、まだ新しい記憶の内である。セイは、退院後も、一度として参加したことがなかったので、そろそろその時期だということさえ、気にしていなかった。


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