▼ 6.蒼い水を溶いた花
まず、感謝しなければならない。対になる不幸と、幸運は、どちらもおまえの願いから生まれたのだ。
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「せっかく、今まで、待ってやったのに。もう限界です…………罰を。あなたに、罰を与えましょう」
それはけして大きいわけでははないのに響く、女の声だった。ドゥロロは思わず立ち止まっていた。この声を知っていたからだ。
「フォルグ……」
震えて、今にも立てなくなりそうなのを堪えながら、声の方に振り向いたドゥロロは目を見開き、固まった。
目の前には、花の飾りとリボンが上品なデザインの黄色いワンピースを着た、色の白い少女がいる。背中まである、黒い髪は癖があり、ふわふわと揺れている。彼女は小さく頷くと、目を伏せて塀に凭れたまま、静かに微笑んだ。
しかし、今度は考え込んだまま、何も言わなくなったので、不思議に思い、ドゥロロが声をかけた。
「あなたに、罰を与えようと思ったのですが……そうですね。あなたは、あまり俗物や、俗な情への欲がない様子。ですから────うーん。難しい」
それならいっそ、放っておいてほしい、とドゥロロは思ったが、まさかそんなことを言える立場ではなかった。彼は知っているのだ。彼女の立場の方が、優位にある。
「ああ、そうだ、あなたに流れる半分の血の、成長スピードを早めてあげましょう」
しばらくして、やっと口を開いたフレネザは、そんな提案をした。有無を言わさない口調だった。
「それは」
「もちろん、木妖の血の方を──。礼には及びません。私には、雑作もないこと。あなたも、さっさと役目を果たせた方が、幸せでしょう」
「……ですが、そんなことをしたら、あいつが──」
「私は、生きるも死ぬも、概念として理解はありますが……それに対し、悲しいとか、嬉しいとか、ピンと来ないのですよ」
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