▼ 5.きみを呼んでる
「……いなくなった」
言葉を反芻して、それからセイは思い出した。
あのときの、ドゥロロの曇った瞳のことや、操る力のこと。
彼を責めるつもりはない。だが、どうして、彼女を台座に近づける必要があったのだろうか?
それに、あそこは、どういう場所で、どうして、ドゥロロはぼくらの居場所に、迷いなくたどり着けたのだろう?
「なあ──お前は、彼女を。フレネザのことを、知っていたのか? お前には、なんの必要があった?」
思い切って聞いてみた。何かの賭けに感じた。ドゥロロは足元の苔をむしりながら答える。
「ずっと──ぼくは、この歴史や仕組みを、止める術を、探していたんだよ。森自体を封印したかった。彼女は、その為の儀式を試みた者の一人の記憶を持っている」
「封印? それに、なんで、そんなこと、お前が知って」
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