朝、遅刻ギリギリに学校に着いて職員会議でネチネチ小言を言われ。精神年齢が少し低めの、だけどそれが可愛い生徒たちの元へと足を運ぶとこれまたココでもネチネチ小言を言われ。いやー悪い悪い、なんてヘラヘラ笑ってまた怒られる。それからは時間割通りに授業して、昼御飯食べて、少し居眠り。あまりにも心地よくて、ふぁ〜よく寝た、なんて時計に目をやり数秒思考が停止する。慌てて飛び起き次の授業に向かうとやっぱり生徒たちに怒られた。さようなら、生徒たちが次々と帰って行く。とりあえず、抜き打ちでした小テストの採点をして、あぁ、やっぱりアイツらちゃんと授業聞いてなかったな、なんてバツ印だらけの答案用紙を眺めながらため息吐いて、明日と明後日は待ちに待った休みだから、来週の月曜日の分の授業の準備をして学校をあとにする。さようなら、また来週。さぁ、今日も当たり前のように1日が終わる。筈だった。

高校を出てからもうずっと一人暮らしで、学生時代はそこそこ遊んだりもしたけれど、自分のペースを乱されたり気遣ったりすることが苦手、というか面倒で、だから彼女が望んだとしても同棲なんてする気にはなれなかった。故に、かれこれ十年以上オレの帰りを待ってる誰かなんて存在しない。ソレを寂しいと思ったことのないオレは結婚なんて一生無縁なんだろうな、なんて思う。別にしたいとも思わないが。

帰宅ラッシュから逃れるためにわざと学校で時間を潰してそこそこ空いた電車に乗って、ガタンゴトン心地いい揺れが眠気を誘う。ソレに抗うことなく瞼を閉じて、もう一歩、というところで車内に響くアナウンスが現実の世界へと引き戻す。あぁ、いい気持ちだったのに。なんて名残惜しくも電車を降りて駅からそう遠くない自宅へと歩き出す。曲がり角を曲がればそこはもう自宅で、何の気なしに空を見上げて、帰ったら洗濯物取り入れなきゃ、なんて、自宅であるそこそこ綺麗なマンションに視線を移して思わず立ち止まった。



(え、なんで電気ついてんの?)

朝、部屋を出た時は消した筈なのに、どういうわけだかリビングから明かりが漏れている。ついにボケた?なんてシャレにもならないことを考えながら、いや、待てよ?洗濯物がひとつも干されていない。そんなこと、あるわけがない。雨の日以外は大抵洗濯機を回している。干し忘れ?そんなこと、一度だってない。ということは、誰かがオレの家に勝手に入り込んでいて、洗濯物まで取り込んでくれてるってことだ。

泥棒ではないだろう。とは思うものの、不法侵入者であることは間違いない。とりあえずオレは走って自宅へと向かった。

久しぶりに走ったものだから、少しばかり乱れた息を整えつつ、鍵穴に鍵を差し込む。ガチャリ。恐る恐る扉を開けると玄関にはところどころ汚れの目立つ、目がチカチカするような、カラフルのスニーカーがきっちり揃えられていた。もちろん、オレのものではい。だけどコレ、どっかで見たことある。どこだっけ?記憶のカケラを拾い集めているとリビングからパタパタとスリッパを鳴らしながらよく知る金色が駆け寄ってきた。あぁ、コレ、ナルトがいつも履いてるやつだ………って、

「へ?」

ココ、オレんちだよね?なんでナルトが居るの?思わず間抜けな声を出してしまった。そんなカカシを見てナルトはニコリと笑い、言った。

「おかえりなさい、アナタ。ご飯にする?オフロにする?…それともオレ?」

漫画なんかでよくあるセリフ(本来はオレじゃなくてワタシだけど)相変わらずナルトはニコニコしていて。どうやらオレの返事を待っているらしい。

「オマエ、かな。」

なので王道で返してみた。たぶん相手もその返事を待っているだろうから。

「…ふーん。じゃあオフロ入ってきてってば。その間にご飯の用意するから。」

ていうのは勘違いだったみたいで。そう告げるとクルリと踵を返してそそくさとリビングへと戻っていった。心なしかチラリと見える耳が赤かったのは気のせいだろうか。もしかして照れ隠し?なんか、可愛い…って、何考えてんだ、オレ。


とりあえず言われた通りに風呂に入ろうと洗面所へと向かうとバスタオルに着替えのスウェット、パンツまできちんと用意されていた。ご飯の用意をするとか言ってたし、なんだか良い奥さんみたいだなーなんて、湯船に浸かりながらぼんやり思う。あぁ、凄く良い湯加減。…っていうか何流されてんだ。なんでアイツがオレの家に居るの?

ナルトはオレが受け持つクラスの生徒で。明るく人懐っこくて、クラスの中心的存在。イタズラ好きの問題児でおまけにテストは赤点ばかりなもんだから、職員室の常連でもあったりする。手のかかる子ほど可愛いっていうか、バカな子ほど可愛いっていうか、ナルトもどうやらオレにどうやらなついくれてるみたいで悪い気はしない。

そういえば、突然住んでるアパートの取り壊しが決まって追い出されるって教室で嘆いてたっけ。ナルトは両親が他界して一人暮らしで親代わりである遠縁のおじさんはどうやら海外に居るとかで、海外には行きたくないから、と、同じ一人暮らしのサスケに住ませてくれって頼んで断られてた。あぁ、だからオレのところに来たのか。でもなんで家に上がれたんだろう。まさか兄弟だとか嘘ついて管理人に入れてもらったのだろうか。個人情報にうるさいこのご時世、そんなこと簡単にできるわけもないが、まぁたぶんその線で間違いないだろう。ナルトだったからよかったものの、これが知らない奴だったら大問題だ。明日、ちゃんと管理人に言っておこう。
 
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