(1/2) 今日こそは……今日こそは、言ってやる。そう覚悟を決め、俺は椿を呼び出した。 バクバクと波打つ心臓がうるさい。深く深呼吸して、椿を見据えた。俺が真剣な顔をしているからか、椿も少し緊張した面持ちで俺を見上げている。 「……清正さん? 大事な話とはなんでしょうか」 「えっと、まあ……その、なんだ」 おろおろと頭をかく俺を、不思議そうに見つめる椿。……うっ、また心拍数が上がってきた。落ち着け、落ち着け俺。 「お、俺は……」 言え。言うんだ。ひと思いに言ってしまえ! 「俺は、お前のことが……」 「私の、ことが?」 「すっ……!」 あと一言! ……とは言っても、喉がつかえて言葉が出てこない。何やってんだ俺、早く! 言え! 顔が熱い。顔の体温だけが一気に上がっていく感覚。耳がジンジンと痺れ、情けないことに今の俺は真っ赤なのだろうと嫌でも実感する。 いっそのことこの場から逃げ出してしまいたいが、それでは今までと変わらない。 「す、す……!」 「す……?」 「っす、すがすがしい朝だな! 雲一つない晴天で……」 ふと見上げると、空は薄暗い雲で覆われていて、太陽など見えやしない。 「……曇ってますね」 「……曇ってるな」 ……くそっ。自分の情けなさに腹が立ってくる。 咳払いでごまか……せてはいないだろうが、改めて椿に向き直る。 「俺は、椿が……!」 今言わなければ、絶対後悔するだろう。……椿が好きだ、椿が好きだ……。よし言えるじゃないか、次はいける! 「す、すき……好き嫌い。そうだ、椿は食べ物の好き嫌いはあるか!?」 「えっ? ……そうですね、割となんでも食べる方なので……ない、かな」 「そっ、そうか。……俺も、同じだ」 馬鹿か! 俺は馬鹿か!? 壁に頭を打ちつけたい衝動に駆られ、その場にしゃがみ込んだ。 そんな俺を心配してか、椿は俺の顔を覗き込む。 「あの、清正さん? どうしたんですか、今日は調子が悪いみたいですけど」 「だだだ大丈夫だ、全く問題ない」 「でも、顔、すごく赤いです」 「こ、これは……だな。その、暑さで」 「……今日はとても冷え込んでますよ」 訝しげな表情を浮かべながら、椿は手を伸ばし、俺の額に触れた。細い指が、冷たく感じる。 「やっぱり、熱い……って、あれ……?」 気付けば、俺は椿の手首を掴んでいた。 next→ ← |