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今日こそは……今日こそは、言ってやる。そう覚悟を決め、俺は椿を呼び出した。
バクバクと波打つ心臓がうるさい。深く深呼吸して、椿を見据えた。俺が真剣な顔をしているからか、椿も少し緊張した面持ちで俺を見上げている。


「……清正さん? 大事な話とはなんでしょうか」

「えっと、まあ……その、なんだ」

おろおろと頭をかく俺を、不思議そうに見つめる椿。……うっ、また心拍数が上がってきた。落ち着け、落ち着け俺。

「お、俺は……」

言え。言うんだ。ひと思いに言ってしまえ!

「俺は、お前のことが……」

「私の、ことが?」

「すっ……!」


あと一言! ……とは言っても、喉がつかえて言葉が出てこない。何やってんだ俺、早く! 言え!
顔が熱い。顔の体温だけが一気に上がっていく感覚。耳がジンジンと痺れ、情けないことに今の俺は真っ赤なのだろうと嫌でも実感する。

いっそのことこの場から逃げ出してしまいたいが、それでは今までと変わらない。


「す、す……!」

「す……?」

「っす、すがすがしい朝だな! 雲一つない晴天で……」

ふと見上げると、空は薄暗い雲で覆われていて、太陽など見えやしない。

「……曇ってますね」

「……曇ってるな」


……くそっ。自分の情けなさに腹が立ってくる。
咳払いでごまか……せてはいないだろうが、改めて椿に向き直る。

「俺は、椿が……!」

今言わなければ、絶対後悔するだろう。……椿が好きだ、椿が好きだ……。よし言えるじゃないか、次はいける!


「す、すき……好き嫌い。そうだ、椿は食べ物の好き嫌いはあるか!?」

「えっ? ……そうですね、割となんでも食べる方なので……ない、かな」


「そっ、そうか。……俺も、同じだ」

馬鹿か! 俺は馬鹿か!? 壁に頭を打ちつけたい衝動に駆られ、その場にしゃがみ込んだ。
そんな俺を心配してか、椿は俺の顔を覗き込む。

「あの、清正さん? どうしたんですか、今日は調子が悪いみたいですけど」

「だだだ大丈夫だ、全く問題ない」

「でも、顔、すごく赤いです」

「こ、これは……だな。その、暑さで」

「……今日はとても冷え込んでますよ」

訝しげな表情を浮かべながら、椿は手を伸ばし、俺の額に触れた。細い指が、冷たく感じる。


「やっぱり、熱い……って、あれ……?」

気付けば、俺は椿の手首を掴んでいた。

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