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「き、清正さん……?」

「……え、あっ!? すまん!」


慌てて謝りつつも、手を離せないでいた。……細い。強く握れば、簡単に折れてしまいそうな細さなのに、柔らかい。
――くそ、俺、最低だな……! 自己嫌悪に陥りながら、勢いに任せ椿を抱きしめた。



「…………、逃げないのか?」

てっきり抵抗されるものだと思っていたが、椿の反応はなく、大人しく俺の腕に抱かれている。

「……嫌では、ないので」

そっと服を掴まれ、何かが締め付けられるような感覚を覚えた。
あんなに言い出せなかった一言が、溢れ出すように俺の口から零れる。


「……好きだ」

「……え?」

「椿が好きだ。ずっと前から、俺は……!」



しばらく、無言の時が流れる。……やっと、言えたな。結果はどうであれ、後悔はしていない。

――離れようとしたその時、椿の手が俺の腰に回った。ぎゅっと抱きしめ返され、一瞬、思考が止まる。

「……椿?」

「……嬉しい……!」

嬉、しい? ……って、どういうことだ?
頭が混乱している。されるがままに固まっている俺を見上げ、椿は幸せそうに微笑んだ。


「嬉しいです……! 私もずっと、清正さんのことが好きでした!」

椿が……俺を好き? なん、だと? 夢、夢じゃないよな?
喜ぶ椿の目尻に、涙が滲む。拭っても拭っても、じわじわと溢れ頬を濡らした。

「すみません……! なんか、感動しちゃって……止まらなっ……」

「お前っ……可愛すぎるだろ……」

堪らなく、抱く腕に力を込めた。

「清正さんっ、ちょっと苦しいです……」

「す、すまん! なんというか、慣れなくて……」

「……ふふ、私もですよ。少しずつ、慣れていきましょう?」

照れ笑いながら、椿は俺の手を取る。そして、目を丸くした。


「……男性の手って、こんなに大きいんですね。それに、なんだか骨ばって……」

「そ、そうか? お前の手は……やっぱり、柔らかい、な」

言い終わってから気付き、はっと口を押さえる。だが、椿はそれを気にもせず、まじまじと俺の手を弄る。やばい。これはなんだか色々とやばい。


「……椿。そろそろ……」

「えっ! あ、ごめんなさい、嫌でしたよね? つい夢中になってしまって」

「いや、嫌なわけじゃないんだが……その……心臓が持たん」


ああ、俺はなんて情けないんだ。まともに椿の顔も見れず、更に熱を帯びた顔を片手で覆う。

「清正さん、真っ赤ですね」

「い、言うな! それを!」

「……可愛い」

くすくすと笑む椿。
全く嬉しくない。断じて嬉しくない……はずなんだが、顔の火照りと頬のにやけは当分収まりそうもなかった。
……こんなに幸せでいいのだろうか、俺は。


2012/01/06


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