(2/2) 「き、清正さん……?」 「……え、あっ!? すまん!」 慌てて謝りつつも、手を離せないでいた。……細い。強く握れば、簡単に折れてしまいそうな細さなのに、柔らかい。 ――くそ、俺、最低だな……! 自己嫌悪に陥りながら、勢いに任せ椿を抱きしめた。 「…………、逃げないのか?」 てっきり抵抗されるものだと思っていたが、椿の反応はなく、大人しく俺の腕に抱かれている。 「……嫌では、ないので」 そっと服を掴まれ、何かが締め付けられるような感覚を覚えた。 あんなに言い出せなかった一言が、溢れ出すように俺の口から零れる。 「……好きだ」 「……え?」 「椿が好きだ。ずっと前から、俺は……!」 しばらく、無言の時が流れる。……やっと、言えたな。結果はどうであれ、後悔はしていない。 ――離れようとしたその時、椿の手が俺の腰に回った。ぎゅっと抱きしめ返され、一瞬、思考が止まる。 「……椿?」 「……嬉しい……!」 嬉、しい? ……って、どういうことだ? 頭が混乱している。されるがままに固まっている俺を見上げ、椿は幸せそうに微笑んだ。 「嬉しいです……! 私もずっと、清正さんのことが好きでした!」 椿が……俺を好き? なん、だと? 夢、夢じゃないよな? 喜ぶ椿の目尻に、涙が滲む。拭っても拭っても、じわじわと溢れ頬を濡らした。 「すみません……! なんか、感動しちゃって……止まらなっ……」 「お前っ……可愛すぎるだろ……」 堪らなく、抱く腕に力を込めた。 「清正さんっ、ちょっと苦しいです……」 「す、すまん! なんというか、慣れなくて……」 「……ふふ、私もですよ。少しずつ、慣れていきましょう?」 照れ笑いながら、椿は俺の手を取る。そして、目を丸くした。 「……男性の手って、こんなに大きいんですね。それに、なんだか骨ばって……」 「そ、そうか? お前の手は……やっぱり、柔らかい、な」 言い終わってから気付き、はっと口を押さえる。だが、椿はそれを気にもせず、まじまじと俺の手を弄る。やばい。これはなんだか色々とやばい。 「……椿。そろそろ……」 「えっ! あ、ごめんなさい、嫌でしたよね? つい夢中になってしまって」 「いや、嫌なわけじゃないんだが……その……心臓が持たん」 ああ、俺はなんて情けないんだ。まともに椿の顔も見れず、更に熱を帯びた顔を片手で覆う。 「清正さん、真っ赤ですね」 「い、言うな! それを!」 「……可愛い」 くすくすと笑む椿。 全く嬉しくない。断じて嬉しくない……はずなんだが、顔の火照りと頬のにやけは当分収まりそうもなかった。 ……こんなに幸せでいいのだろうか、俺は。 2012/01/06 ← |