※SS『星は、ささやく』続編。










「は…?」

浅い眠りから覚めてそうそう、口から漏れた言葉はこんなモノだった。

昨日…いや今日の深夜、近くの河原の土手でぼんやりと星を眺め、ゆっくり歩きながら家に帰りベッドに横たわってすぐに眠りについた。あのとき星に、また彼女に会えますようにと叶うはずもない願いをかけた。…しかし、


当の本人が今、俺の目の前にいるのである。


相変わらず気の強そうな様子で、座骨あたりまであるストレートの茶髪をなびかせながら腕を組み、仁王立ちをしている彼女。

「なんでお前、ここに…」

呟きながら目をこすり、側にある時計を見ると10時を指していた。寝ぼけているのだろうか。

「まぁ話せば長くなるんだけど。」

そんな俺の考えを否定するように髪を手でかきあげ、そっぽを向きながら話す様子は本当に彼女らしくて…どうやら本物の彼女であるらしかった。

「あんまりにもあっけなく死んじゃったから、神様が御慈悲で少しの間だけ地上に降りてもいいって言われたの。でも会えるのはたった1人だけ。だから私はあんたを選んで会いに来たの。」

何か文句でもあるの?というような強気な口調。とたんに全身に広がる愛しさが、俺は彼女を心から愛しているんだなと再度確信させた。

そして昨日の喧嘩について思いだし、深く頭を下げて謝罪した。

「ねぇ、私がなんであんたに会いに来たか分かる?」

意外にも彼女の返答はこうだった。驚いて顔をあげ彼女を見つめる。すると彼女ははぁ、とひとつため息をついてから、眉を下げ寂しそうに笑った。

「あんたが星に、私に願いをかけたからだよ。」



確かに、彼女はそう言った。


「…え?」

「だから、あんた昨日星に向かって『もう一度彼女に会えますように』ってお願いしたでしょ?私、見てたんだから。…空から。」

えぇまあ、はい。と答えるより他が無かった。口に出してもいないのに何でわかったんだ、こいつは。

「それともう1つ。」

いろいろ考えているところを遮られて彼女に意識を戻すと、彼女は顔の横に1本指を立てて立っていた。それから俺に近寄って俺の横に座り、耳元で何か囁いた
「私は、『あんたに愛されて幸せだった』よ。とっても、幸せだった…。今じゃあんた意外なんて考えられないって…これをどうしてもあんたに言っておきたくて。」

その言葉にハッとして彼女のいる方向へ顔を向ける。彼女の目元には水が大量に溜まっていて、今にも零れ落ちてしまいそうだった。

「こんなに早くお別れしなくちゃいけないなんて…思ってなかった…の。」

大粒の涙をこぼしてしゃくりあげながらこう言った彼女を見ていたら、封印していた感情がまた、俺の目から溢れだして視界を遮る。

俺は彼女を抱き締めた。離れることの無いよう強く強く。あぁ神様、どうして俺も一緒に連れていってくれなかったんだ。

彼女には触れず俺の腕は虚しく合わさっただけだったけれど、その上から彼女が俺を抱きしめ返してくれた。

「愛してる。これからもずっとお前だけを…」

弱々しく泣きながらそう言うと彼女は

「うん…うん。」

と嬉しそうに相づちを打った。



そのあと、もう時間だから行くね。さようならお元気で、という彼女の声が聞こえてそのあとのことは覚えていない。






気がついたら、俺はベッドの上に横たわっていた。

起き上がって見てみても、なにも変わった様子はない。

ふと時計を見ると、針は10時を指していた。あれは夢だったのだろうか…

考えこんでいると、何かが時計の横で光った。目を凝らしてよく見ると、それは彼女がつけていたピアスの片割れだった。それは、事故のあとどんなに探しても見つからなかった物だ。


俺はそっとそれを握りしめ、大きくのびをすると顔を洗いに洗面所へ向かった。



今日からまた、新らしい1日が始まる。









ロストタイム・タイマー
―『少しの間』は他の人達にとっては『ほんの一瞬』でしかないんだ。だから時を止めてあんたに会いにきたんだよ―



――――――

SS『星は、ささやく』続編。

まさかこれに続編がつくとは思って無かったです←でも気づいたら書いてました(笑)

今は本当にあったら怖いと思うけど、この男の立場になったらきっと男と同じになるような気がします、

奇跡は信じなければ始まらないのですよ…!!

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -