夜中。多分時計の針が深夜2時を指そうというころ、俺以外誰もいない河原の土手ではぁ、と息を吐き出す。その息が白く色づいたあたり、きっと外の温度は10度とないだろう。

黒いウィンドブレーカーに身を包んでいる俺は、はたから見れば完全に闇に同化して見えた。

横においてあった缶コーヒーを手に取り、プルトップを上に上げる。カチリ、と言う音とともに広がる湯気。よかった、まだ暖かい。

そっと口元に持ってきて1口飲む。喉の奥とお腹の中に広がる暖かさにほっとため息をつくと、白い息がもう一度、闇夜に上がる。

コーヒーを手に持ちながら空を見上げる。白、青、赤、オレンジ…周りが暗いせいか実にまあ様々な星が夜空に輝いている。



「私は星になりたいの。」

と昔、うっとりした表情で星を眺めながらそう言っていた彼女の顔が思い出される。

当時俺は、馬鹿げていると言ってそれを笑った。もっと現実を見ろよ、と。すると彼女は頬を膨らませていつかはなれるんだよと言っていた。


そう、それはつい昨日のことだった。俺と彼女は喧嘩をした。きっかけはほんの些細なことだった。

怒って横断歩道へ飛び出した彼女を俺は止めることが出来なかった。信号が赤だったことに気づかず渡ろうとした彼女の横には猛スピード―あれはきっとスピード違反だろう―で突っ込んでくる車があって、止める間もなく俺の目の前で彼女は星になってしまった。

一瞬、なにがおこったのか分からなかった。しかし目の前でもはや原型も留めていないほどぐちゃぐちゃになってしまった彼女を見て一気に現実に引き戻された。

俺は泣いた。カッコ悪いけどそんなものはお構い無しで取り乱して泣いた。ごめん、ごめんよと必死に謝ったけれど彼女はもう昔のように笑って抱きしめてキスしてはくれなかった。


「お前は…」

空を見上げながらそっと呟く。手には缶コーヒーの暖かみが伝わってくる。

「…お前は俺に愛されて、幸せだったのか?」

今ではもう答えは分からない。けれど。

キラリ、俺の呟きに答えるように青い明るい星が一際明るく輝いた。








星は、ささやく
―その星に、1度でいいから彼女と話が出来るようにと願いをかけた―



――――――
なにやら季節外れなSSですね←
今は夏だというのに冬ものです(笑)
つい昨日友達とプラネタリウムに行ったので星関連のSSになりました!
冬場は星がとても綺麗に輝くそうですよ。



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