そこは御愛嬌。 | ナノ
ざわざわとしているクラスの中、目当ての人物を探したけれどなかなか見つからない。なんだよ、自分から呼んだくせにどっか行っちゃったのか。
「誰探してんの?」
「あー、真田なんだけど」
「真田?あいつならさっき先生に呼ばれたみたいだけど」
「そっか、ありがとう」
まあ先生なら仕方ないか。
…それにしても、帰ってくるまでどうしよう。ここでうろうろしててもキモいしな…あ、ジャッカルじゃんあれ。
「ジャッカルー」
「お、叶井じゃねえか。どうしたんだ?」
「真田に呼ばれてきたんだけどー、あいついないらしくて」
「あー、さっき先生に呼ばれてたからな」
そう言いつつジャッカルは小脇に日本史の教科書を抱えている。このクラスは次は日本史か。あの人あんま好きじゃないんだよなー、何か真田並に暑苦しくて。
ていうかそもそもジャッカルってこのクラスだったっけ?と思ったので率直に訊けば、お前さり気にひでーな、と苦笑いされてしまった。ごめんジャッカル。
「あ、そうだ、お前飴食うか?」
「食べる食べるー」
「ほらよ」
「せんきゅー」
ジャッカルは丸井にもガムをあげてんのに飴まで持ってるなんて、何て気の利くやつなんだ。私の中で未だに帰ってこない真田の株が下がった代わりにジャッカルの株が急上昇した。
「お前語尾のばす癖あるよな」
「ダメ?安心するとなっちゃうんだよ」
「いや、別にダメじゃねーけど」
そうそう、ジャッカルの隣は安心するんだよ。気楽だしジャッカル優しいし。こりゃ丸井も引っ付くわけだわ。もう真田来なくていいよ、ジャッカルに癒されてたい。
「おい、真田来たぞ」
「……えー」
人生ってそううまく行かないものなのね。てかあいつ絶対忘れてるでしょ。
「待ってたんじゃねえのか?」
「んー、そうだけど。ジャッカル、飴ありがと」
「おう」