▼ 04

 そこからの斉藤くんの動きは速かった。勢いよく起き上がって俺のパンツをずるりと脱がし、それから俺の足を開かせて持ち上げると、腰の下に枕とか布団とかを次々に押しこんだ。要するに今の状況としては高く上げられた俺の裸の尻の前に斉藤くんが陣取っているわけで、いやもう何と言うか、確かに舐めていいよと言ってしまったのは事実だけどいざとなるとやっぱり色々と耐えられない。
「早乙女くん、手で隠しちゃったら舐めてあげられないよ」
「だ、だって」
「ほら手どけて。いい子だから」
「……っ」
 だからついそこを押さえて隠した右手の指に、斉藤くんがたしなめるように舌を這わせる。でもそう言われても、俺の手はもう自分では動かせなかった。緊張とか恥ずかしさとかでガチガチに固まってしまったらしい俺の手は、まるでそこに張り付いてしまったかのようにぴくりとも動かない。
 そんな俺の手のこわばりとかすかな震えに気がついたのか、斉藤くんはちらりと視線を上げ、俺の手を優しく握った。指をすりすりと撫でて、絡めて、思わず絡め返した指は、そのまま1本斉藤くんの手の中に握りこまれてしまう。同じようにもう1本。最終的には完全に俺の手は斉藤くんの手に繋ぎとめられ、そのまま尻の前から外されてしまった。代わりに開いた両足、膝の裏に乗せられ、自分で足を開く格好にさせられる。そして、パンツも指も、隠していたものが全て取っ払われてしまった裸のそこが、ついに斉藤くんの目の前に晒されてしまった。あまりの恥ずかしさに目をきつくつぶると、不意にそこに斉藤くんの息が触れた。
「っ、あ……!」
 触られたわけでも、舐められたわけでもない。ただ息を吹きかけられただけ。とっくに切羽詰まっている俺は、それだけの刺激を勝手に快感として拾ってしまう。
「早乙女くん……」
「ん、っ……!」
 熱に浮かされたような声で、斉藤くんは呟く。それにさえ感じてしまう俺は、多分もう頭も体もおかしくなっちゃっているのかもしれない。だからついに柔らかい斉藤くんの舌が触れた瞬間、大げさなくらい腰が跳ねてしまった。
「あ、あっ……!」
「ああ可愛い早乙女くん……やっとこの日が来た……」
「まっ、待って斉藤くん、やっぱりやだ!」
「うん……」
 うんと言ったくせに斉藤くんは一切待とうとしなかった。ひたすらそこの表面に舌を這わせている。びくんびくんと、その度に腰が跳ねてしまう。だって気持ちいい。何でこんなに気持ちいいのか分からないが、本当に頭がおかしくなってしまいそうだった。
 斉藤くんの舌に舐められたどこもかしこも気持ちよくなっちゃう俺の体のせいなのか、それとも決して綺麗ではないところを斉藤くんに舐められているという背徳感みたいなもののせいなのか、それとも前斉藤くんが言っていた通りそこを舐められたら皆こんなに気持ち良くなっちゃうのか。理由は分からないが気持ち良すぎて斉藤くんに舐められてるところから溶けていってしまいそうな気がした。
 表面をくまなく舐め回した斉藤くんは、次はべちょべちょに濡れたそこを舌先でつついてきた。つんつん、と一度。それから硬く尖らされた舌先が、入り口からわずかに入り込む。
「ん、あ、ぁ……、待って中は……!」
 ぎゅっと収縮した入り口が、斉藤くんの舌を押し出そうと締め付けたのが分かった。一度舌を抜いた斉藤くんは、再び表面を舐めまわす。少しほっとして、いやほっとしている状況では全然ないんだけどとにかく、ちょっと力が抜けたところをみはからって今度は斉藤くんの指が入りこんできた。
「あ、っ……!」
 1本、2本。さっきも中を擦られていたそこは、斉藤くんの指をたいした抵抗なくのみこんだ。
「あ、ーーっ!」
 奥の気持ちいいところを、なんなく探り当てられる。ゆっくり、強く。指先で押し上げられれば、頭の中が真っ白になった。
「いく、斉藤くん、いっちゃう触って……!」
「まだダメ。もっと早乙女くんのアナル舐めさせて」
 少し低くなった、やらしい声で囁いた斉藤くんは、指を少し抜き、入り口で上下に開いた。隙間から、斉藤くんの舌が滑り込む。中の粘膜を、熱くて柔らかい舌が這う。ぞくぞくして、じんじんして、ああもう駄目だ。
「ふ、あ、ぁ……だめ、あ、むり、もう無理お願い……!」
 堪らず自分で触ろうと伸ばした手は、しかしすかさず斉藤くんの手に押さえられた。
「なんっ、やだ、さ、斉藤くん、触って、イかせて、っ……」
 ぎゅう、と斉藤くんの手を握る。振りほどきたいけど振りほどけない。視界は完全に滲んでいた。泣きながら触って、いかせてと懇願する俺に、ようやく斉藤くんは舌の動きを止めてくれた。
「早乙女くん」
「なに、はやく、」
「舐められるだけじゃイけそうにない?」
「むり、も、お願い……」
 しゃくり上げると早乙女くんはゆるゆると口元を緩めた。くそ、こいつ本当に覚えてろよと思うものの、今の俺はもうイくことしか考えられなくなっていた。
「じゃあどうしてほしい? 教えて早乙女くん」
「触って、はやく……っ」
「どこを? 前? 後ろ?」
 早乙女くんの指は、ゆるゆると浅いところを出入りする。扱いてイかせてほしいと思っていたはずなのに、そのゆるい刺激に心が揺れた。
「あ、ん……っ」
「どっちにする? アナル舐められながら早乙女くんがぐずぐずになっちゃう気持ちいいとこを突かれるのと、それとも先走りでぐちょぐちょになってる前を触られるのと、どっちがいいかな」
「っ、あ、分かんな、も……」
「ん?」
「あ、おねが、なんでもいいから、なんでもするから早く……!」
 俺の答えに薄く笑った斉藤くんは、起こしていた上体をまた沈めた。斉藤くんが散々舐めてふやふやに溶けちゃってそうなそこの表面をまたぺろぺろ舐められる。舌先でくじられ、唇をつけられ、じゅるじゅると音をたてて吸われたら、イきそうでイけない、もどかしすぎる快感が戻ってくる。膝の裏を押さえている両手には、うっすら白くなるくらい力がこもってしまう。次の瞬間、斉藤くんの指先が中に入ってきた。奥の方まで、焦れったいくらいにゆっくり優しく押しこまれる。一番気持ちいいところの寸前で止めて一度抜いて、焦れた俺を見て目を細めた斉藤くんは体をずり上げてきた。目の前に斉藤くんの舌が差し出される。散々俺のケツを舐めた後なのに、俺は喜んで自分の舌を絡めてしまう。もう一度斉藤くんの指が中を擦り、ゆっくり優しく、今度こそ一番気持ちいいところを奥まで押し上げた。
「あ、ぁ、あ、イく、イっちゃう……!」
 顎が浮いて、背中がそる。つま先が丸まる。全身に勝手にぐっと力が入って、次の瞬間絶頂に駆け上がった。
「は、ぁ、っーー」
 がくんと体の力が抜けた。支えきれなくなった足は、斉藤くんの手の中に着地した。目を開けると、斉藤くんは体を起こし、俺の両足を抱え上げていた。散々舐められたせいで濡れた粘膜に、熱い先端が押し当てられる。
「は、っ、待って、いま、……」
 気持ちよすぎてもはやこわかった。だというのに斉藤くんのものを表面に擦りつけられると、それが与えてくれる快感を知っている体は勝手にまた期待し始めてしまった。慣らすようにずるずると硬いもので表面をなぞられ、居ても立ってもいられなくなって、斉藤くんが自分のものにローションを塗りつけるそのわずかな時間さえもどかしい。
「斉藤くん……っ、なか、まだ……?」
「本当に可愛いなあ早乙女くん……そんなに欲しいの? これ」
「んあっ」
 また表面をずるりと滑って通り過ぎた熱い先端に反応して、そこが甘く疼く。いやもう甘いとか気持ちいいとかそんな感じなんかとっくに通り越して、もう焦れったすぎてヤバい。また斉藤くんが俺のことを可愛いとかなんとか変なことを言ったのが聞こえたけど、もう否定する間も惜しかった。
「ほし、ほしい、おねが……っ、入れて、奥、いっぱいして……!」
「あー……もう……」
 はあ、と熱い吐息をもらした斉藤くんは、ようやく先端をつぷりと中におしこんできた。そのままゆっくり、斉藤くんのものが奥へ進んでくる。
「あ、ぁ、すごい、あ、っ」
「早乙女くん……気持ちいい?」
「きもちい、すごい、ぁ、あ……」
 頭の中がチカチカした。斉藤くんのものが奥の気持ちいいところに到達した途端、また頂点にのぼりつめた。
「あー……すごいね、入れただけでイっちゃったの?」
「あ、っ、しんじゃう……」
「僕もしにそう。早乙女くんが可愛すぎて」
「かわいくな、あ、あっ」
 俺の脱力した体を抱きしめ、斉藤くんは容赦なく腰を打ちつけてきた。中は余韻と新たな快感が混ざり合ってじんじん痺れている。そこから先はもう駄目だった。感じすぎて訳が分かんなくなった俺は、きもちいいとか、もっとしてとか、斉藤くんだいすきとか、泣きじゃくりながら喘いでそれはそれはもう可愛くて堪らなかったと後に斉藤くんはデレデレしながら語ったけれど多分そんなの嘘だし、なんならもうこの話は最初から最後まで全部斉藤くんの夢だったということにしておいてほしい。

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