Hot summer !!! | ナノ


  04.これでも後輩


部長が正座をすること数十分。
もうそろそろ着くころちゃうかと門の方に向かえば、案の定ジャージの団体が見えて。軽く頭を下げれば、向こうも軽く手を挙げた。

「白石はどうした。」
「説教中ですわ。」

コートまで案内する道すがら、不意に投げかけられた質問に淡々と返せば、相手は鼻で笑う。「どうせ、遠山とかいうやんちゃな1年だろ。」なんて、俺の言い方が悪かったかもしれへん。
「ちゃいますわ。」と答えながらコートの門を開ければ、その光景にぽかんと口を開けとった。

「金ちゃんは家族旅行や〜言うとったんで、合宿のことは秘密にしとりますわ。」
「そうか。……ところでアレは何だ。」
「触れんといてください。」

アレはもしかしたら置物ちゃうかってくらいに完璧なフォルムの土下座。それを無きものとして普通にお喋りしとる部員。ぽつりと放置された黄色と緑によるグラデーションカラーの置物、もとい部長に敢えて誰も触れへん。
こんな異常な景色を唐突に見せられて、口が開かないわけがない。

「部長、もう土下座えぇんで部活始めてください。」
「ちょお待ち、今それどころちゃうねん。」
「は?……あぁ。」

他校を引き連れて部長の元に向かえば、まるで許しを請うような体勢で話す部長に、先輩相手ながらも呆れ顔を向けた。それでも体勢を直さない部長をよく見れば、小さく震えとる気がしなくもない。迷わず口角を上げて、軽く部長の足を踏む。
声にならない音を発した部長に「痺れたらマッサージがえぇんですよ。」なんて適当な言葉を並べてみせた。


「っちゅーことで、四天宝寺の白石や。よろしゅう。」
「氷帝の跡部だ。よろしく頼む。」
「立海の幸村だよ。よろしく。」
「青学の手塚だ。暫く世話になるが油断せずに行こう。」
「あはは、もっと気楽に行こうや。」

数分後。まるで何事もなかったかのように他校の部長と挨拶しとる部長の精神力の強さに、思わず感心した。



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