頂き物:We love us [ 1/9 ]

「おはよう二代目!」
「mornin'、鈴」

朝相棒のスコルとともに起きて一階に降りれば既に二代目がリビングにいた。
ラジオを聞きながら朝の珈琲タイムと洒落こんでいる。

「よく寝れたか?」
「もちろん」

にこりと笑って冷蔵庫からオレンジジュースを取り出してグラスに注ぐ。
ぐいっと飲み干していると階段を降りる音が聞こえた。

「おはよネロくん」
「……はよ…」

寝ぼけ眼で髪もぼさぼさの状態でネロくんが現れた。

「顔洗っておいで。早くしないと置いてくよ?」
「……ああ」

ネロくんが洗面所に消えたのを見て、空になったグラスを流しに入れた。

「先に玄関に出とく。行ってきます」
「ああ」

気をつけろよ、と言葉を受けて玄関を出る。
早朝の掃き溜めの街は静かで、朝靄に包まれている。
玄関から少し離れた所でストレッチをしていると後ろのドアが開かれた。

「早ぇよ」
「悪いね」

パーカーを着て身支度を整えたネロくんにくすりと笑いかける。

「今日のメニューは?」
「30分ジョグしてから空撃ち練習、ラストちょっと走り込もうか」
「ああ」
「コースはいつも通りで。OK?」
「Yeah, Are you ready?」
「Yes. Let's start. Ready…Set. Go!」

地面をゆるやかに蹴り出し、スラム街に向けて足を動かし始めたのだった。



「ただいま」
「おかえり」

ネロくんと玄関を開けて中に入れば、二代目が朝食の準備にキッチンに立っていた。
加えてバージルも既に起きたらしく、二代目の横に居た。

「バージルおはよ」
「mornin'、バージル」
「お早う」
「何か手伝うことある?」
「もうほとんど終わっている」
「じゃあ俺シャワー浴びてくる」
「なら上の人達起こしますか」

ぴっ、とテーブルの下を指差すとスコルがそこに移動した。
ネロくんがシャワールームへと移動し、上でまだ寝て居るであろうダンテ達を起こそうと手摺に自分の手をかける。
ああそうだ。

「バージル」

階段を一つ登ったところで呼べばキッチンからバージルが顔を出す。

「何だ?」
「昨日買った本読み終わったから次読む?」
「もう読み終わったのか」
「昨日一気に読み切ったからね。割とよかったよ」
「後で部屋に持ってこい」
「えぇ……取りに来てよ。ベッドの枕元に置いてるからさ」
「持ってこい」
「じゃあバージルの部屋に置いとくからね」

仕方ないとため息混じりに階段を昇る。
まだ閉められているドアは三つ。
うち一つをノックした。

「初代ー、朝だよー」

ドアの向こうから衣擦れの音と、ん〜、と言う返事が聞こえる。
うし、初代は起きた。
残りの二つのドアを見つめる。
まだ寝て居るのは髭さんと若だ。

「ネロくんのバスター喰らいたい人ー」

ぼそりと呟いてはみたが二つのドアの向こうから返事はない。
ただの屍……そう簡単に死ぬタマではないけど。
一度自分の部屋に戻ろうとした時に初代の部屋のドアが開いた。

「mornin',鈴」
「おはよう、初代」

すれ違いざまに頭を撫でられて、くすぐったさに目を細める。

「初代、悪いけど髭さん起こしてもらっていい?流石に寝起きにバスターはきついと思うの」
「ああ、分かった」
「お願いね」

自分の部屋のドアを開けて枕元の本を手に取る。
タイトルは『失楽園』。
ミルトンの著書で前から読みたかったものだ。

「若ーぁ」

本を持ったまま双子の部屋に入る。
バージルの机の上に本を置き、若に声をかけるがみじろぎすらしない。

「若、朝だよ。うぇいかっぷあーりぃ」

カーテンを開け肩を軽く叩けば、ゆるく開いた瞼から薄氷色の瞳が覗く。
相変わらず綺麗だ。

「起きた?」
「あ〜……鈴」
「おはよ、ダンテ」
「……はよ」
「朝食の準備が出来てるよ。下に降りておいで」

優しい声音で言ってぐしゃぐしゃになっている髪を指で梳く。
瞼が数回瞬きした後、寝返りを打たれた。

「若?」
「すぐ行くから先に行っててくれ」

小さく息を吐いて部屋を出る。
これで起きなければ後は知らない。

「mornin'、鈴」
「おはよう髭さん」

階段に出たところでリビングのテーブルにつく髭さんに挨拶する。

「若は?」
「すぐ来るって」
「明日は俺を起こしてくれ」
「気が向いたらね」

くつくつと笑ってテーブルにつく。
やがてくわりと大欠伸をしながら若が降りて来た。

「mornin'」
「mornin'、若」
「よかったな、バスター喰らわなくて」
「鈴が起こしてくれるからな」

初代からの皮肉に若は眠たげなまま私の横の席につく。
その様子に思わず苦笑した。

「これが初代や髭さん、二代目みたいになるって、なんだか信じられないな」
「お前等二人がいるからこうなるとは限らないだろ?」
「だってさ。どうするバージル?」

朝食の準備を終えたバージルがテーブルにつく。

「愚弟がどうなろうと知ったことではない」
「料理もできず部屋の掃除も出来ず、かつ借金大量に抱えてもか?」
「今とあまり変わらない気がする」
「鈴とバージルがいるからどうにでもなるだろ」

若の発言に思わずバージルと息を零した。

「子育ては任せた、母さん」
「誰が母親だ」
「おとーさんは外で働くのが仕事だからな」
「ならば馬車馬の如く働いてこい。稼いだ金は全て俺が管理する」
「ひでぇ」

くつくつと笑っていると二代目が席についた。
小さく頂きますと手を合わせてから食事に手をつける。
今日も和やかな朝がやってきた。




We love us
(a happy morning. Take it easy)




[*prev] [next#]
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -