頂き物:酒の魔力 [ 7/9 ]

※性転換注意
※学パロ
※鈴は♀→♂
※お酒は二十歳になってから




「ほら」
「ありがとな」

フライパンで綺麗に巻いた出汁巻き卵を皿に乗せ、大根おろしを乗せてネギを散らす。
それをつまみとして出せば、母は嬉しそうに目を細めた。

「いつでも嫁に出せるな」
「嫁じゃなくて婿な。それに俺は婿に行く気はねぇよ」
「この朴念仁」
「うっせぇ」

母と向かい合わせにテーブルに座れば、母は徳利からお猪口へ酒を注ぎ、私にそれを掲げた。
こちらはそれにカフェオレで対応する。

「乾杯」
「乾杯」

こつり、と陶器がぶつかる。
カフェオレに口をつけようとした所で、チャイムの音が鳴った。

「こんな時間に誰だ?」
「俺が出る」

立ち上がってインターフォンのカメラを確認し、目を丸くした。
ダンテだ。
今日は中学の時の同窓会があって、遅くなるようなら迎えに行くつもりだったのに。
何かあったのだろうかと玄関へ向かい、ドアを開いた。

「どうし……」
「鈴〜〜〜っ!」

開けた瞬間に首に絡み付いて抱きついてくる女の子。
驚いて動けなくなったが、密着した身体から伝わる体温の高さ、ダンテの華やかで甘い匂いに混じる、吐息の匂いに何がどうなったのかが分かった。

「お前、なんで酒を飲んでるんだ」
「ふふ〜〜〜〜んっ!鈴〜〜〜〜っ!」

すり寄ってくる幼馴染みにため息をつき、片手で抱き寄せて玄関の戸を閉めた。
廊下ではリビングの方から母親が顔を覗かせる。

「おや、ダンテじゃないか」
「酒飲んで酔っぱらったみたい。これじゃ帰らせられないから、エヴァさんに連絡入れて」
「分かった。鈴がお持ち帰りっと」
「違ぇよ」

消えた母親にツッコミを入れる。

「ほら、ダンテ靴脱いで」
「ん〜〜〜っ」

玄関に座ってダンテを横に抱え、靴を脱がせる。
脱がし終わった後、自分の部屋のベッドに寝かせるために抱きかかえようとしたのだが。

「鈴っ」

す……っとダンテが目を細め、私の首筋から鎖骨にかけて指先でなぞる。
その感触に背筋がぞくりと粟立った。
これは、まずい。

「駄目」

そっと淫らな動きをするダンテの手を握りしめる。
いつもよりも色香を伴った彼女の唇は、艶やかな言葉を口にする。

「鈴がほしいの」
「駄目」
「ちょうだい」
「駄目」
「なんで?」
「駄目なものは、駄目」

きっぱりと言い放てば弧を描いていたダンテの唇がへの字に曲がり、大きな薄氷色の瞳が濡れた。

「なんで……?いっつもそうじゃない……」
「あのな……」
「私のこと、そんなに嫌い?それとも魅力がないの?」
「そんなことは」
「どうして振り向いてくれないの?どうすれば振り向いてくれるの?」

ぽろりぽろぽろと、透き通った雫が頬を伝っている。

「いっつもいっつも、鈴は私のことを突き放す。嫌いなら嫌いって言ってよ。なんで優しくするの?鈴の気持ちが分からないよ」

心情を吐露する彼女に胸が詰まりそうになった。
私のことを想ってくれる彼女が、とても愛しい。

「ダンテ」

そっと親指でダンテの涙を拭い、嗚咽をこぼす彼女を両の腕で抱きしめた。
壊れないように優しく、でも離さないように強く。

「……大切に、想ってる」

小さく呟けば、腕の中のダンテが目を丸くして顔を上げた。

「ほんと?」
「本当に」
「嘘ついてない?」
「ついてない」

泣いた烏がもう笑った。
涙で頬が濡れているのに笑顔になって私の首に手を回して頭に抱きついてくる。
たわわに実った果実が顔に押し付けられた。

「鈴だーいすきっ!」
「はいはい」
「すきっ!」
「はいはい」
「すきって言って!」

顔を上げたらとても上機嫌なダンテの顔。
まるで大型犬が尻尾振って待っているのに酷似している。

「言ったらキスしてあげる!」
「せんでいい」
「えー、いーじゃんキスしよーよ」
「しない」
「鈴のいじわるっ!」
「なんとでも言え」
「あ、おばさんこんばんはー!」

振り返ったらリビングのところから座った状態で顔を出した母親がこちらに向かって手を振った。
見てたんですがお母様。

「おい、何でスマホのカメラをこっちに向けてる?」
「ああ、今スパーダにリアルタイム送信中だ」
「なにやってんだクソアマぁあああああ!!」


次の日、酒を飲んだことがばれたダンテはスパーダさんとバージルに雷を落とされ、俺についてはほとんど不問だった。
これからもよろしくとかスパーダさんから言われて、着々と外堀が埋まってる気がして俺は駄目かもしれない。






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