大砲娘と世界征服論 | ナノ



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「葵」
「うーん」
「起きろ!」
 
 ばさりと布団を剥がされたと思えば、寒いくらいの風が襲ってきて身体を震わす。そういえば昨日はお風呂上りに寝たから暑かったんだよなあ。下着姿で寝る癖やめないと風邪引きそう。
 小さなくしゃみをしながら寝ぼけ眼を擦っていれば、目の前には般若顔負けの蒼也が立っていることに気付いた。
 
「いったーい!」
 
 頭の上にたんこぶを作った私は痛む場所を抑えながら本部への道を歩く。
 
「痛いよ蒼也。別に殴ることないじゃん」
「何度言えば下着姿で寝なくなるようになるんだ」
「えー、目の保養になるでしょ?」
 
 あっけらかんと言い放てば彼が拳を作ったのが見えたので慌てて両手を掲げて降参の意を示す。しかし、なんで非番なのに本部へ行かなければいけないのだろうか。前回の報告書を適当に仕上げたのがバレたのか。
 朝っぱらから城戸さんに怒られるのいやだなあ。鬼怒田さん庇ってくれないかな。
 
「はあ。……忘れているようだが、今日は玉狛第二のランク戦だろ」
「あ!」
「お前が俺に起こせと言ったんだぞ」
 
 咎めるような蒼也の視線を苦笑いで躱しつつ、そういえばそんなこともあったのかとぼんやりした頭で考える。今日は那須隊と鈴鳴隊たちと戦うはずだ。前回は諏訪隊と荒船隊であったからある程度予測出来た戦略を練れた玉狛がどう行動するのか、私はそれが気になって仕方なかったのだ。
 結果とすればすでにランク戦は始まっている時間帯で、これであれば隊室で寝泊まりすればよかったと思えてならない。
 
「(まあ、そんなことを言えば隣の隊長サマが黙ってないだろうけどなあ。みかみーの司会進行聞きたかったなあ)」
 
 と言うか、今回の解説者は誰だ。
 
「今日の解説者って誰か知ってるー?」
「迅と太刀川だったように思うな」
「えー、その二人かあ。太刀川ちゃんと解説できんのかな。まあ、那須ちゃんの雄姿見れたらいいか」
 
 迅はともかく、太刀川は真面目にできるのだろうか。……司会がみかみーだから上手く手綱を握ってくれているとは思うけど。
 本部へ足を踏み入れる。
 
「お前の予想は何処が勝つんだ?」
「えー、どうだろう。地形選択が那須隊だったはず。戦力的に言えば鈴鳴が上なイメージあるけど、びっくり箱の玉狛がどう崩すかだよねえ」
 
 戦力的にみれば、鈴鳴の村上をどう攻略するかが那須隊と玉狛の鍵となってくる。
 空閑くんの機動力は村上に太刀打ちできると思うけど、あのサイドエフェクトがあるからなー。事前に戦ってなかったら勝機あるかも。
 
「うーん、自信ないけど那須対4の玉狛3の鈴鳴2かな」
「! 鈴鳴が有利だが勝ち点には繋がらないのか」
「一番バランスが良いのは那須隊だからね。私は那須ちゃんの欲張りな感じが好きだからねー」

 会場に向かえば既に観客席がいっぱいだったので二階席に行けば意外な人物がいた。
 
「げっ、二宮……と、出水!」
「風間さんと葵さん! と言うか、なんで俺は後付けみたいな感じなんすか」
 
 まじか。二階席にこの二人とか知ってたら来なかったのに。
 蒼也は既に空いている席に着席をして観戦と決め込んだので私も極力二宮を視界に入れないようにして席につく。出水が無視だとかなんだとか言ってたけどそれも無視した。ごめんだけど、今は静かにしとくよ。