大砲娘と世界征服論 | ナノ



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 結果を言えば、またもや玉狛が勝利をおさめた。私の予想は外れてしまったけど、ピンポイントでは予想通りの結果となったのが嬉しい。
 
「面白かったねー」
「ほんとっすね! 玉狛の狙撃手やばいっすね。黒トリガーレベルすぎる」
「太刀川のヤツめ……温い解説しやがって」
「もー、二宮いちいち口出ししないでね」
 
 試合の様子を思い出しながら出水と話していれば二宮の一言が飛んでくる。
 睨むように彼を見れば、彼は私以上に睨んでいたので正直かなりこわい。やっぱりこいつ苦手だ。
 
「予想は外れたが惜しかったな」
「え、葵さんはどんな予想をしてたんすか?」
「那須対4の玉狛3の鈴鳴2!」
 
 結局は玉狛4で那須が3、鈴鳴が2であった。
 
「村上を空閑くんが倒すのかなーとは思ってたけど、那須ちゃんが三雲くんと来馬を倒したりすると思ってたからちょっと外したなー」
「いや、大体当たってるじゃないっすか!」
 
 転送位置も那須隊が有利であったのは目に見えていたけど、千佳ちゃんを使っての地形変形をして自分たちの有利に変えてしまうのはさすがとしか言いようがない。
 エース同士の戦いは中々面白かったな。水中戦に持ち込んだのは勝機があると踏んでの行動だっただろうし、事実スコーピオンの特性をよく掴んでいた。
 那須ちゃんに来馬たちを当てるのは三雲くんが自分の実力を知っての行動なのだろう。
 ただ――。
 
「まあ、もう通用しない所まで来てるけどねー」
 
 順位が大幅に変更となり、玉狛第二はB級の上位に上り詰めることとなった。
 B級はB級でも格が違うことを嫌でも体感させられるだろう。
 
「おおー、次も面白そうだなあ。東さんの戦いとか久しぶりに見るかも。二宮も応援しとくね、東さんの次に」
「東さん好きだな」
「えー、風間のほうが好きだよ?」
「やめろ」
 
 風間を弄って遊んでいれば二宮が聞こえるように舌打ちをしてきたのが怖い。影浦と言い、二宮と言い、年下怖いわ。出水も心なしか顔が青いし。
 
「お前の」
「うん?」
「お前の予想では次の試合、どうなる?」
 
 二宮の声に振り返ってみれば、いつになく真剣な表情だ。まあ、二宮の感情の機微とか読み取れないけどね!
 
「二宮が負けるはずないでしょ」
 
 お腹がすいたので食堂で昼食でも食べよう。
 席を立って風間を連れて外に出れば、解説を終えた迅と太刀川に出会った。
 
「解説おつかれー」
「葵さん俺の解説どうだった?」
「さすがエリート迅くん。素敵だったよー」
「あ、俺の解説聞いてなかったでしょ」
 
 今まで二宮と出水との4人で観戦していたと言えば驚いた顔をされた。けれどすぐに納得されるのだ。私も二宮のクール?な所しか知らなければ意外だと思うけれど、あいつの熱い部分を知ったら相手を知りたいと思うのも当然だよね。
 けれど、改めて玉狛の戦いを見て思うことが幾つかあった。きっと次の試合でも同じ戦術で来れば敵わないだろう。
 
「次の試合面白そうじゃない?」
「勝敗が分かりきった試合を見るのは気が進まないな」
「あ、やっぱりそう思うんだ」
 
 二人してカツカレーをむしゃむしゃ頬張っていれば、首を傾げた太刀川。迅は彼らの先輩ということもあってか幾分か神妙な顔つきであるものの、否定する気はないらしい。
 
「うーん、太刀川にわかるように言えば、千佳ちゃん……玉狛の大砲娘は人が撃てないんだよねえ。隊長の三雲くんも決めてには欠けるし戦術もワンパターン。そんなんじゃきっと二宮と影浦たちに飲み込まれる」
 
 地形を変えて不利を有利に転じれる状況を作り出せるのは私や千佳ちゃんくらいの限られた人間しかいない。けれど、人を撃つことが出来なければ戦力として数えることは出来ないのだ。
 しかも、主戦力である空閑くんは置いておいて、もう一人の三雲くんも点数を稼ぐことが出来なければ実質的に空閑くん一人に頼るしかできない。
 今までは空閑くんが必ず生存していたけれど、空閑くんを狙われてしまえば玉狛は終わったも同然と言えた。
 
「私だったら真っ先に空閑くんをベイルアウトをするわ。そうすれば、後は放っておいても自滅してくれるだろうし」
「葵さんって時々エグいこと言うよね」
「神崎の言い分が理解できない訳でもないけどな。四つ巴であって、実力が均衡する部隊が揃った時、弱いチームから如何にして点数を巻き上げるかも大切となってくる」
「……そのこと自体に三雲達が気付けているのかってことか」
 
 風間隊だったら真っ先に玉狛狙うよねー。もしくは、玉狛の点数をもぎ取ろうとする相手の隙を突くか。
 この4人で次のランク戦について話し合うことは面白い。勉強では全く役に立たない太刀川は戦闘になると頭の回転が良いし、冷静な判断をする蒼也と機転を利かせることのできる迅、そして私が合わさった時の談義は中々実のあるものだ。
 
理想と現実 

 四人で満足の行く話し合いが出来たと切り上げた時、周囲にギャラリーが出来ていたことに驚いたのは私だけじゃないはず。


ランク戦のあとにあーだこーだ話し合うくらいの戦闘マニアが集まっていたら楽しいと思う。
20160809