6.風間蒼也と私とカツカレー。
「これ、さっきみょうじさんからもらって、俺らに差し入れだそうです。」
歌川はさきほど会ったみょうじからもらったタッパーに入ったマドレーヌを、
風間隊の部屋に入った瞬間に報告した。
「え!なまえさんの!?嬉しい!」
「へー。あの人、今度はマドレーヌ作ったんだ。」
「?」
皆が当たり前のように歌川の周りに集まりマドレーヌをもらう姿に風間はノリについていけなかった。
「あいつ、料理できるのか?」
「え?」
「風間さん、みょうじさんの飯食べたことないんですか?」
「ない。」
「風間さんなら何回も食べてると思ってたのに…。」
その歌川の言葉に風間は少しムッとした。
「俺だけ食べたことないのか。」
「意外ですね。」
「なまえさん、風間さんの好物が得意なのに。」
「それは聞き捨てならないな。」
「あの人、無駄に俺たちに餌あたえてくるよね。」
「餌とか言うなって。勉強のついでってくれてるんだからいいだろ。」
「…………。」
風間はやりきれない気持ちを胸にしまい、みょうじが作ったというマドレーヌを食べた。
「…うまいな。」
「でしょー!風間さん、食べたことないなら今度特別に作ってもらったらどうです?なまえさんなら作ってくれますよ。」
「…あぁ。」
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「おい。」
「お。本部で会うなんて珍しいね。」
みょうじはトイレの帰りに廊下で風間に会い、声をかけられた。
なんかいつもけんか腰なのは気のせいだろうか。
「お前、料理得意なんだってな。」
「そうだよ。あれ?知らなかった?」
風間なら知ってるかと思ってたのに。
「そんなこと、一言も言ったことないだろ。」
「あ、そうなんだー。」
「…。」
風間は私の返答に対して眉間に皺を寄せた。
「…え、なにその顔。」
「それだけか?」
「へ?何が?」
「何で俺には言わないんだ。」
「いや、だってもう知ってるかと。」
「俺の隊だと俺以外皆お前の手料理を食ったことがあるらしいな。」
「あー。そうだね。多分。」
「なぜ俺だけ食べたことないんだ?」
「タイミングが悪いんじゃない?」
「…。」
「なんでそんな怖い顔すんの!?」
「作れ。」
「へ?」
「お前の得意料理、カツカレーなんだろ。作れ。」
「な、なんでそれ知ってるの?」
「三上から聞いた。」
「あぁ…。なるほど。」
「作ってくれ。」
「でもカツカレーってもってこれないよ。あ、マドレーヌ食べた?」
「マドレーヌは食べた。旨かった。」
「よかったー。またレパートリー増えた。」
「明日、お前の家行くから。食わせろ。」
「えぇ!?」
「行くからな。」
「え、ちょ、おま。」
みょうじが返事をする前に風間はもう立ち去ってしまった。
ま、まずは部屋を片付けないと…!
そ、それから!?
全ての部屋を油断せずに綺麗にしないと…!
k、か、あ、風間が家くるなんておちつけねぇぇぇぇぇぇ。
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