二日目
「ところで、名前は?」
「…」
「おい。」
「…」
「…おいってば。」
「…」
「…ったく…。」
私は銀さんの言葉を無視して、部屋の隅で体操座りしてる。
そりゃ無視するよ。
「いい加減機嫌直せよ。」
「…」
「はぁ…。」
銀さんは仕方なさそうに頭をかく。
「そりゃな。俺も悪かったよ。」
「…」
「まぁ、いきなりキスすんのはな。」
「…なよ…。」
「は?」
「っざけんじゃねェェェェよォォォォォォ!!」
「うぼっ!!」
私は近くにあったクッションを闘魂を込めて銀さんに投げつけた。
銀さんは部屋で倒れた。
「はぁ…はぁ…。」
「…っつ。」
銀さんはゆっくりと起き上がる。
私は銀さんに近づいて、仁王立ちする。
「何が男の人じゃァァァ!てんめ携帯だろうがァァ!しかも何どさくさにまぎれて人のファーストキス奪ってんじゃねぇよォォォ!」
「ちょいちょいちょい!待てェェェ!落ち着けェェ!」
「分かった。」
「って落ち着くんかい。」
私たちは床で向かい合って正座した。
「まぁ、キスした事は謝る。ごめん。」
「…まぁ、過去は変えられませんからね。」
「でもよ。」
「?」
「ちょっと感じちゃっただろ?」
「っ!」
銀さんはニヤッと笑って言った。
私はその顔と言葉にやられた。
「な、何言ってるんですか気持ち悪いしね。」
「ちょ、ドサグさにまぎれて怖い言葉言っちゃってるよー!この子!」
「…はあ。」
何かもうこの人に振り回されっぱなしだよ…。
「もう私寝るんで。明日も朝早いんで。」
「あ、そう。じゃ、一緒に寝るか。」
「寝てもいいけど布団の中で抓り続けるよ。」
「なんだその地味すぎる攻撃!」
私は洗面所に向かった。
「着替えるから。覗くな。覗いたら携帯解約する。」
「わ、わあった!」
銀さんは慌てたように言った。
何、コイツ。覗くつもりだったの。
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「…ふう。」
「ん。着替えたか。」
銀さんはテレビを観ていた。
「おやすみ。」
「って早っ!」
私はベッドに潜り込んだ。
ベッドに潜り込んで、一息ついたら
「っ!ってオイ!」
「あ?何。」
銀さんも布団の中に入ってきた。
何かもう色々と密着してるんだけど。
「何で普通に入ってるのよ。」
「いや、男経験なさそうだからどう反応するかなへぼおおお」
私は銀さんをベッドから蹴り落とした。
「こういう反応するの。」
「…なる…ほど。」
銀さんは床で少しむせる。
「そりゃ何もしないならいいけどさ…横で屍が寝てると思って寝るよ。」
「いや、それは逆に嫌だろ。てか俺屍扱いっ!?」
私はまた布団に潜り込む。
「…まぁ…私は無経験者だからさ…。」
私は壁側を向いて、表情を見られないようにした。
「…悪ぃな。」
「…謝ってるのに尚、ベッドに入るんだね。」
…もうツッコむ気力も無くなった。
「…携帯でしょ。朝の5時30分に起こしてよ。」
「りょーかい。」
「…ぐう。」
「寝るの早ェなオイ。」
俺はぐっすり寝てるなまえを見る。
「…ったく。油断しすぎだっつーの。」
なまえの髪の毛を優しく撫でる。
携帯であるからこそ出来る事がある。
携帯であるからこそ出来ない事がある。
でも俺はお前を守る。
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