政宗さんとデート! ――暗闇の中、派手なアクションと濃いラブストーリーが大きなスクリーンの中で展開されていく。
久し振りに来た映画館。
こんなに大迫力なものだったでしょうか。
あまりの音にびくりっと肩を震わせれば、すっと私の肩に政宗さんが腕を回された。
至近距離に、政宗さんの息遣いを感じる。
顔を見れず、ただ真っ直ぐ映画を見つめて。
だというのに、全然内容が入ってこないから困ったものです。
「……あんなでかいものだとは思わなかったぜ。この世界は娯楽が多いな」
映画を見終わってから、私と政宗さんはオープンカフェで休憩することにした。
楽しそうに語る政宗さんの表情を眺めていたら、先ほどの緊張はなくなって、私もくすりと笑みが浮かぶ。
でも、政宗さんはさすがで。
ただこうして、一緒にカプチーノを飲まれているだけなのに、女性店員さんや他の女性客の方、ましてや通行人の方までが、その視線を政宗さんに熱く注がれていた。
あぁ…… 隣にいるのが私なんかですみませんっ!
あ、あの、私、決して、政宗さんの彼女とかじゃありませんから!
必死に俯いて、私と同じように汗をかいているメロンソーダを啜った。
「Ah,honey……」
『は、はい!』
呼ばれて慌てて顔を上げれば、政宗さんは苦笑いを浮かべていて。
「……俺と二人っきりじゃ、つまらないか?そんな下ばかり見て」
『い、いいえ?!違っ、ぎゃー!』
政宗さんに失礼なことをしたと、否定しようと咄嗟に立ち上がったら、テーブルに腕をぶつけて半分は残っていたメロンソーダの入ったグラスを倒してしまいました。
しかも、あろうことか、緑の液体が政宗さんに……!!
『ご、ごごめんなさいっっ!』
周囲からクスクスと含み笑いをされている。
最悪だとか、非難するような声も聞こえた気がした。
もう頭の中は真っ白で、とりあえず、店員さんが駆け寄ってきてくださるのも見えたけど、ポーチに入っていたハンカチで政宗さんにかかった液を拭う。
「……っ、だ、大丈夫だ、だから、honey、wait!!っ、夢子っ」
『え?』
突然名前を呼ばれ、両肩を捕まれて、私は政宗さんへと顔を上げた。
少し赤くなられているその顔は、少々焦っていらっしゃるようで。
「……ah、……はぁ。honey、そこは自分で拭く。手を退けてくれ」
切実に吐き出された政宗さんのセリフに私は自分の手元を確認する。
『き、きゃあっ?!』
わ、私、なんてことを!
もう、その後、ずっと政宗さんのお顔をまともに見れませんでした……。
「お嬢ーっ!お帰りなさいませ!……伊達に何もされませんでしたか?!つかなんで、そんな顔が赤いんですか?!」
『い、いえ、これは』
「伊達政宗ぇ?!アタシのお嬢に何したぁあっ?!」
「Ha,monster!俺は何もしてねぇよ。今日は好感度を上げるprojectだったしな」
「うわー、なにそれ。キモイ、セコい」
「……おい。 ふん、今日のhoneyは積極的だったぜ?あんたにも見せてやり――」 『いやぁっ、言わないでくださいーっ!』
「……な、何があったのさ、そしてこの敗北感。え、これ後13回とか耐えれない……」
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