日吉若に
「ちょ、まっ、やっ……!」
罰ゲームの内容が足ツボマッサージをされるという事なのは理解している。
でも、これは……っ
「おい、お前ふざけてるのか」
「ふざけてないよ!全然っ!!でも本当に足にちょっと触れるだけでも擽ったいんだけどもっ」
若くんの呆れたような顔は段々と眉間にシワが寄っていたが、私は断じてふざけてなどいない。
素足を若くんの手で掴まれるだけで、もう身がよじれるほど擽ったすぎる。
「きゃははっ!」
「っ……おいっ」
ガンッと若くんの顔面を蹴ってしまったらしい。
鋭い眼光で睨みつけられて、私はヒッと呼吸を一瞬止めた。
「ご、ごめん、ごめんなさいーっ」
精一杯声を上げて、足の感覚を頭から削除しようとする。
でもやっぱり擽ったくて、プルプルと震えてしまった。
「……ふんっ、罰ゲームだからな……」
「ちょ、……ぎゃー!痛い痛い痛いーっ!」
ニヤリと笑った若くんが指の第二関節の骨でグリグリと何かのツボを押した。あまりの激痛に私は叫ぶ。
めちゃくちゃ痛い。
さっきの擽ったさは一体どこに行ったの?!って思ったら、擽ったいのを思い出してしまって、擽ったさと激痛の狭間で揺れた。
「きゃはははぎゃーっ?!痛い痛いくすぐったぁああっ?!痛いっあは、あははっ!!」
「…………お前……情緒不安定なのか」
「し、失礼にもっ、痛っ、にもっ、程があるっっ」
「いや……だいぶ気持ち悪いぞ」
「じゃ、じゃあっ!もうグリグリするのっ、やめ、でぇっ?!くそ痛いっ!!んははははっ」
痛みと擽ったさにもう暴れまくったと思う。
途中冷たい目をした若くんが鬼に見えたけど、そんなのは可愛いものだ。
私の暴れる足を華麗に避け続けた若くんだったが、ちょっと油断していたんだろう。
何回目か避けた際、若くんは後ろの壁に後頭部を強打していた。
ぐらりと後頭部を押さえながら若くんの頭が揺れる。
やっと解放されたと思った私は慌てて足を引っ込めたけども、そのホラー映画並にスローモーションに見えた若くんの動きに何やら悪寒が走った。
「……夢野。お前……覚悟しろよ」
キノコヘアーの切り揃えられた前髪から覗く瞳がぎらりと光る。
「や、やだ!覚悟しないもん!というか、避けてぶつかってるのは若くんがドジなせいだと思う……よ……はっ!」
バッと自分の口を塞ぐが時すでに遅し。
「……夢野」
グイッと逃げていたはずの足を無理やり掴まれた後に引っ張られて、私はガクンっと体制を崩した。
「……さっきの痛みは序の口だからな。馬鹿めっ」
「わぁぁあっ、ごめっ、ゆ、許して!若くんいや若様っ!!ぬれ煎餅あげるからぁあ」
ギャーっと叫んでじたばたしたけど、古武術の型か何か知らないけど、関節を若くんの脚と片方の腕で押さえられていて無駄だった。
ぬれ煎餅にピクリと反応があったので、その後私はぬれ煎餅を一枚、二枚、三枚……!と追加する条件を出していくが、あとから聞いた話、若くんはこの時私の追加条件の出し方が、播州皿屋敷みたいでちょっと面白かったらしい。
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