バレンタイン突発企画
(2020ver.※不思議少女の楽曲のみ)
※新テニが始まらずに卒業式を待つ&手塚は三月ドイツ予定。リョーマもいる二月設定
※(キャラ名)はその話の視点人物
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来た甲斐があった
「しかし困りました!皆さんのチョコレートは発送済みなんですが!!」
「いいさー!まーさる料理いっぱいかむんどー!」
慧くんがパーティー会場にある全ての料理を平らげながら、機嫌よく夢野に答えていた。
申し訳なさそうな困り顔にポンポンっと彼女の頭を撫でる。
「……甲斐さん」
「まぁ、私たちが勝手に乗り込んで来ただけですからね」
「そうやっしー。やーが気にすることないさー」
「うう、木手さんも平古場さんも優しい……」
永四郎と凛も珍しく夢野に嫌味を言わなかったのは、彼女がいつもと雰囲気の違う綺麗なドレス姿だからかもしれない。
ドキドキと高鳴る心音は、彼女に触れた瞬間やけに大きくなった気がした。
「あ!でも、あそこにあるチョコレートケーキ!私が作ったんですよ!待っててくださいっ」
「「え?」」
新垣と不知火が表情をキョトンとさせていた。もちろん、わんも瞬きをぱちぱちと繰り返す。
「どうしたん──」
「ハッピーバレンタインですっ、知念さん!!」
「──んぐっ?!」
駆け足でチョコレートケーキのとこに突進して、皿にそれを乗せて戻ってきた夢野は、その勢いのまま、まず寛くんの口にケーキを放り込む。
それから、驚いたままの新垣と不知火に。それから凛にも。永四郎は若干抵抗したが「ほら!!木手さん!あーんっ!!」と大声でフォークを差し出されて、渋々と口を開いていた。
慧くんは素直に大口を開けて待機していて、最後にわんに向かって満面の笑み。
夢野は自分がしていることがどれほど恥ずかしいことなんて今思い至って無いんだろう。
ギスギスとした他校からの嫉妬や羨望の視線を背中に受けながら、はぁっと溜息をつく。
「はいっ、甲斐さん、ハッピーバレンタイン!あーん」
「あー……ん……」
ひょいっと口の中に広がった甘さ。
果たしてそれは、チョコレートの甘さなんだろうか。
それとも……
「……でも、来てくれて嬉しかったです!」
そうわったーらに微笑んだ彼女に、来た甲斐があったと心の底から思ったんだ。
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