バレンタイン突発企画

（2020ver.※不思議少女の楽曲のみ）
※新テニが始まらずに卒業式を待つ＆手塚は三月ドイツ予定。リョーマもいる二月設定
※（キャラ名）はその話の視点人物

注ぐ視線も囁く愛も

「ねーちゃん、ねーちゃん！ワイもチョコレート欲しい～っ！」

たこ焼きでもええでと続けた金ちゃんの声を聞いて、夢野さんがやってくる。
立海の丸井くんがまだ何か用事があったみたいだったが、完全に夢野さんの思考はこちらにしか向いていない。

「はい！金ちゃん、いつもありがとうです！ハッピーバレンタイン！」
「おおきにー！！」

嬉しそうに笑った金ちゃんの頭を撫でてから、夢野さんは傍におったケン坊、銀、千歳にチョコを渡していく。
それからぎこちない手足の動きになっている謙也に手渡した。もうロボットダンスでもしとるんかなっちゅー動きで、人のこと笑われへんぐらいドキドキしてるけど、謙也を見とったら緊張が少し解ける。

「はいっ、小春おねぇ様！一氏おにぃ様！お納めくださいませっ」
「やぁん、おおきにぃー！」
「苦労したやろうから、受け取ったるわ」

小春とユウジがわしゃわしゃと夢野さんの頭を撫でた。
確かに大変やったろう。
こないな人数分チョコレート溶かすだけでも時間かかるんとちゃうやろうか。

「……詩織、あんま寝とらんやろ。目の下クマ出来ててブッサイクやわ」
「がーんっ！」

こほんっと咳払いした俺と同時に財前がそう言った。ショックを受けている夢野さんやったけど、確かに目の下に薄らとクマが見える。
やはり財前はよく見とるなと感心してまう。と、同時に悔しなった。

「ま、受け取っとくわ。ありがとーな」

それから目を細めて愉快そうに笑った財前に、夢野さんは釣られるように微笑んでいた。

「……あ！白石さん！」
「は、はい」

思わずピシッと背筋を伸ばしたら、ユウジに吹き出される。

「いつもお世話になってます！ハッピーバレンタイン」

「こちらこそ、いつも堪忍な」

いつも元気を貰ってるのは俺らの方で。
自分の笑顔にどれだけ癒されてるやろうかと口に出したかったけども、受け取ったチョコレートが溶けてまうんやないかってぐらい顔が熱くなったから、言葉にするのは辞める。

……誤魔化しきれへんくらいの熱量。
無駄なことは嫌いやけど、この悪足掻きだけはもうちょい続けさせてな。

△

[しおりを挟む]