悪霊は私の中に住まう



※三成恋愛エピローグ後です



――はろうぃん、というおかしな異国の祭りなど楽しむつもりはなかった。だから、夢子が声をかけてきた時も私は遠慮するときっぱり断って部屋に向かったのである。


「……あの、三成さん?」

暫く下の階から聞こえる喧騒を耳にしながらも読書を楽しんでいた。
半兵衛様に薦められた本である。難解なものではあるが、なかなか読み応えがあり面白い。

そのように一人静かに過ごしていた私の部屋に夢子がやってきた。
遠慮するように叩かれた戸に視線を向ける。

「三成さん、お茶を入れてきました。お部屋に入ってもいいですか?」

「……あぁ、構わないが」

戸を開け、中に夢子を招く。
だが、はろうぃんとやらをみなと楽しんでいたのではないのか。疑問が浮かんだのですぐに口に出して尋ねた。

「……わ、私は、三成さんの恋人ですから」

すぐに返ってきた返答にカァッと顔が熱くなる。

「なので、三成さんとハロウィンを楽しみたくて……と、トリックオアトリート?!ですっ」

「私ははろうぃんとやらの楽しみ方を知ら――」

ぎゅうっと抱きついてきた夢子に目を白黒させた。な、なんだ。何故いきなり――

「――っ、くはっ!や、やめっ、やめろ!く、くすぐった……ぁははっ!」

戸惑っていた私の腰や胸元を擽り始めた夢子にわけがわからず身をよじる。
あまりのくすぐったさに思わず声をあげて笑ってしまった。

「お菓子をくれなきゃ、悪戯しちゃうぞっなんて……」

「……っ、次は私の番だな……」

ちろりと舌を出して悪戯っぽい笑みを浮かべた夢子にくらりとした。
私が息を吐き出せば、夢子は両手で制止してから、机に置いていた荷物の中から一つ変わった衣服を取り出す。

「……これは、なんだ」

「仮装です!そして狼男なんですっ。悪戯は悪霊しかしちゃいけませんからっ」

そう笑った夢子に息を吐いてから、私は狼男とやらの仮装をさせられるはめになった。


「……夢子」

「わぁ、三成さん、似合っ――」

次の瞬間には、上目遣いで私を見つめる夢子の唇を塞いでそのまま押し倒していたのだった。

……後でお菓子も用意していたのにと拗ねられたが、あえて聞こえなかった風を装った。
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