怯えさせちまった詫びに



――はろうぃん、だとかいう催しつぅか祭り?みたいなんがある日だからと、みんなで夢子を驚かせようという話しになった。

それで俺はまんま鬼をやることになったわけだが、調子に乗り始めた菊一と久本、桐谷、冬真により特殊めいくとやらが施されることになった。
特殊めいくってのは、化粧の延長だと教えられたが、石膏とやらで顔の形をとり始めたところから、薄々違うんじゃねぇかと思っていたんだ。


「……鬼よ、貴さぶぁほっ!!」
「「ぶあっはははっ」」

完璧に鬼の扮装をした俺にしゃーろっく・ほーむずとやらの格好をした元就が話しかけてきたから振り向いたら、ヤツらしくもなく盛大に吹き出していた。その後ろで猿と風来坊も腹を抱えて爆笑している。

「……これでは、夢子が泣いてしまうのでは?まぁ泣き顔も萌えますが」

「まぁそういう祭りなのだろう?」

明智の変態がくねくねと身をよじらせた後、家康があっけらかんと笑っていた。
家康や幸村は信じているようだが、菊一が語っていたこの祭りの定義とやらが俺には怪しくて仕方がない。
なんせヤツは、夢子に白雪姫とやらの格好をさせて身悶えていたのだ。最早ここまでくると明智と同類としかいえないだろう。

「じゃあ、とりあえず、エロ親一番手で脅かしてきてよ。夢子お嬢が泣いちゃったら、もう全員でねたばらししかないし」

「菊一、貴様……たまに貴様の夢子への想いがわからなくなるぞ」

「……怯える夢子お嬢がみたいんだよ。アタシのこの複雑な心が簡単にみツン成にわかってたまるかよっ」

やっぱ菊一は変態だ。
そんな後ろの会話を聞きながら、俺は言われた通りに夢子の元へと向かったのである。





そして数分後、鬼の扮装を脱いだ俺の前には、拗ねたように頬を膨らませている夢子が三角座りをしていた。

「……な、なぁ。夢子、悪かった。だから、機嫌直してくれよ」

「…………本当に驚いたんですから」

「あぁ、わかってるって……」

そっと肩を掴んで俺のそばに抱き寄せる。

ちなみに菊一たちは部屋の外で様子を窺っているようだ。
俺にばかり損な役回りをさせやがって……と腹が立ったので、夢子の顎に手をかけて口付けを交わしてやった。

夢子が脅かす直前に飴でも舐めていたのか、甘い味が俺の舌にも伝わってくる。
わざとらしく音を立てながら、涙目の夢子の舌に俺の舌を絡ませた。

「……そういやぁ、さっきから下着見えてるぜ?実は誘ってんじゃねぇのか」

「え……?!」

唇を離して囁いた言葉に真っ赤になって脚を閉じる夢子は、やはり菓子よりも甘い。
そっと服の下にある太腿を撫でたところで「夢子お嬢っ、アタシの仮装桃太郎なんで鬼退治しますっ」と叫んだ菊一が、やっと異変に気づいたのか突撃してきた。

それから、数秒もたたずに騒がしくなった部屋ん中は、予想通り過ぎて笑えた。
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