赤い実を食べるのは心を手に入れてから



「ねぇ、詩織センパイ、お菓子持ってる?」

「ふはは、残念だったね少年。三時のおやつは既に我の胃の中だ!」

「ふぅん……。あ、詩織センパイ、ここにチョコついてるけど」

ちゅっと、わざとリップ音を響かせながら、唇の端ギリギリ横を狙って唇を触れさせた。
もちろん、チョコなんてついてなんかない。

「ななな、なんですと?!」

「……美味しかった。御馳走様、詩織セ・ン・パ・イ」

「うぎゃあぁ」

ペロリと舌で自分の唇を舐めて笑みを浮かべたら、いきなり詩織センパイからパンチが飛んできた。
それをさらりと避けてから「危ないんだけど」と涼しい顔で口に出す。

「リョーマくん、悪魔の子でしょ!なんて破廉恥なっ……はっ!最近の子はみんなこうなの?!」
「詩織センパイも最近の子だと思うけど」

「私は破廉恥じゃないやい!」

「それ、意味わかんない」

「破廉恥(は-れんち)[名・形動]恥を恥とも思わず平気でいること。また、そのさま。恥知らず。―な人。―な振る舞い」

「否、意味はわかってるんだけど……」

意味がわからないと言ったのは、俺が破廉恥だってこと。と続けたら、その口が何を言うか!と怒られた。

でも真っ赤な顔した詩織センパイが可愛かったから、全然怖くなかったけどね。

口に出したらまた怒りそうなので、静かに飲み込んだ。
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