ツンツンしてみた!



――さて。
私はこれから少しとあることを頑張って見ようと思うのですよ。ふぉふぉふぉ。


ちょうどよく、今日は氷帝に練習試合に来たらしい立海のテニス部の皆さんもいるので、やはり今日実行するべきだと思う。


「……なぁ、さっきから何ニヤニヤしてんだよぃ。気持ち悪ぃーヤツだな」

「丸井さん、挨拶もなしに気持ち悪いとは失礼な!」

「よ、よぉ、夢野っ」

「切原くん、おはよー!」

元気よく挨拶したら、切原くんは目をそらしながら「お、……はよ」と小さく呟いた後「あ、アンタのせいで昨日三船に殺されかけたんだからなっ!」と理不尽に怒られた。

……しまった。先制パンチを打たれたではないか。

「畜生っ、今日は私がツンツンしてみようデーだったのにっ」

「何バカなこといって騒いでるんだ。練習の邪魔だろ」

「いだぁっ?!」

突如脳天を直撃したげんこつの痛みに涙をこらえる。
顔を上げれば案の定若くんで、その表情はいつもよりも冷たかった。

「若くんの鬼!若くんなんか私のこと好きなくせにっ!!べ、別に私は嬉しくなんかないんだからねっ!だって絶対私の方が若くんを好きだしっ」

よし。練習してきた甲斐があった。完璧なツンデレ台詞じゃなかろうか。……ん?やっぱりさっきの何か変?なんで若くんはものすごい勢いで私から顔を逸らした。下せぬ。

「お、おい。お前なんか今日変じゃね?」

「む。変じゃないですよ!ただ、これ朝早く作ってきただけですっ!丸井さん、後で食べてくださいねっ!あ、別に丸井さんの為に作ってきたわけじゃないんだからっ」

「……え?いや、じゃあこの丸井さんへって書いてんのはなんだよぃ……え、さ、サンキュ……?」

戸惑いながらシフォンケーキが入ってる箱を受け取ってくれた丸井さんから、今度は私を口を開けたまま凝視してきていた切原くんに向き直る。

「切原くんなんか負けても慰めてあげないんだから!練習試合、全部勝ったらご褒美あげてもいいけど、勝たないと知らないからね!」

「……っ、ま、負けねぇよ!」




「……なぁ、誰か詩織ちゃんにアレはツンデレやないってつっこんできてくれへん?」
「いつも俺とお前さんにはなしてる時の方がツンツンしとるナリ。……考えたら虚しくなったんじゃが」




(……俺より好きとか……何もしらないくせに馬鹿夢野めっ。人の気も知らないで……!)
(俺のために作って……な、なんだよぃ。え、俺のこと好きなんじゃねぇのか?!コイツ)
(……夢野のご褒美とか、べ、別にいらねぇけど、ま、負けるつもりははじめからねぇってのっ!)
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