命懸けのチャレンジ精神――それは部活終わりに突然起こった。 心の中でひっそりと、次期部長になり俺無き氷帝テニス部を引っ張っていくのは日吉だと思っている。 だから今日は少し日吉と練習試合を組んでやったのだ。 そしてその長い練習試合を終え、日吉と二人部室に向かったら、そこにあるはずの俺様と日吉の服が何者かによって盗まれていた。 「……そっちのロッカーはどうだ?」 「駄目ですね。……あったのは、やはりこれだけです」 「……ちっ、そうか」 舌打ちしてから、長机に乱雑に置いている服を睨む。 ふりふりのレースたっぷりの中世ヨーロッパ風ドレスに童話の赤ずきんのその服…… ドレスには跡部様へと書かれ、赤ずきん衣装には若くんへと書かれたメモがついていた。 「……これは間違いなくあの馬鹿の仕業でしょう」 「そうだな……」 深い溜め息を吐き出してから、頭をかく。 いつもならそばにいる樺地の姿がないところから、このつまらない悪ふざけに加担している可能性が高い。 「……協力者の主犯各にいるのは忍足、向日……後はジローか」 「この衣装から滝さんあたりも加わってそうですけど」 衣装を着ないと部室外からかけられた鍵をあけてはくれないらしい。 日吉と同じように眉間にしわを寄せてから、俺は記憶を探るように目を閉じた。 「……夢野詩織の身長、体重、スリーサイズ、足のサイズを今から口に出す」 そう大きめの声で言えば、がたんっと窓の外で何かが転んだような音が響く。 「まず夢野の身長と体重は――」 「うわぁあぁあっ、跡部様ぁああっ」 「――ふん、俺様に悪戯なんて百万年早ぇんだよ。アーン?」 息切れ気味に涙目で部室の扉を開けた夢野を鼻で笑ってやった。 「……夢野、お前馬鹿だろ」 日吉は赤ずきんを夢野に被せてから、頭をぺしりと軽く叩いている。……まぁ日吉にこんな悪戯をしてそれだけで済んでる段階で、珍しいだろう。 さて俺は、夢野以外の主犯各を捕らえにいくとするか。 |