君の心臓が停止してしまうぐらいに愛を囁く――はろうぃんとやらの詳細は、前々からしつこいくらいに耳に入ってきていたし、夢子君も当日皆さんでぱーてぃーをしましょうね!と笑っていたから日付も完璧だった。 「……というわけで、とりっくおあとりーと、だっけ?」 「……えっと、半兵衛さん、マドレーヌを今焼いてますし……パーティーは夕方からですよ?」 厨房で忙しなく菓子を焼いていた夢子君の後ろ姿に声をかけたら、案の定そんな返答が返ってきた。 いつものようにキョトンとした表情で首を傾げるところまで予想範囲内である。 「わかってるよ。だからこそ、今言ってみたわけだけど。……邪魔なみんなは買い出しや着替え中だし、まだ菓子も用意できてないだろう?」 「え……っと?」 ここまで言っても要領得ない夢子君に少しいらっとした。 この抜けている感じが可愛らしさでもあるけれど、正直イライラすることも多い。……まぁ結局その後もさらに天然ぶりを発揮するから、最終的には僕の気が抜けるんだけれどね。 「……まったく」 小さく溜め息をついてから、僕は夢子君の顎に手を添える。 「だから、今なら君に悪戯し放題ということだろう?」 「っ?!」 問答無用で唇を重ねて、そっと夢子君の腰を引き寄せた。 ふわりと鼻につくのは、甘い香り。 「……夢子君、さぁ覚悟は出来ているかい?……出来てなくても容赦はしないけど、さ」 唇を離した直後に耳元で囁いたら、彼女は腰が抜けたのか、一気にがくっと膝から崩れ落ちたのだった。 ……まぁ、僕が抱き止めたけれどね。 |