50万筆頭祭 | ナノ
――幸村さんと正式にお付き合いすることになって数週間が経過していた。
そんな中、私にはとても不安なことがある。
それは、幸村さんがお付き合いが始まってから、口付け以上のことをされないということ。
……破廉恥なことが苦手とはいえ、前は何度か迫られたことがある身として、もしやお付き合いに発展してから、そういう魅力が欠けてしまったのではと悩んでいるわけです。
恥ずかしいけれど、私は幸村さんに触れて欲しいのだと思う。
「……信玄さんはいらっしゃらないから……」
数日悩んだ結果、誰かに相談しようという結論に至ったわけですが、その相手というのが問題なわけで。
「……何、先刻から百面相してるのさ?夢子ちゃん」
「さ、佐助さんっ!」
突然背後に立たれたおかげで心臓はバクバクともの凄い音を鳴らしていましたが、その混乱状態が良かったのか、私はそのまま佐助さんに幸村さんの相談を口に出していたのでした。
「……っ」
あまりの恥ずかしさに目眩がする。
だけど、そんな弱音は吐いていられません。まつさんとかすがさんに、幸村さんと2人っきりになれるようセッティングしていただきましたし、今はこの格好で気合いを入れるだけ。
佐助さんからアドバイスと絶対に旦那が喜ぶよと言われて渡された、布面積の少ない紅い下着。ガーターベルトもセットで、本当にこれで幸村さんが喜んで下さるのか不安になってくる。
むしろ、佐助さんの趣味のような……
「……あ、薬を」
抵抗があるならこの薬を飲んだらいいと飲み薬なるものも渡されていた。気合いを入れるために、それも飲み干す。
……なんだか、アルコールのような匂いが鼻腔に広がった気がした。
「……夢子っ?!」
「幸村さん……、お待たせ致しましたぁ」
妙にぽかぽかと火照り始めた身体で、幸村さんが既に待機されていた客間に滑り込む。
現れた私の姿を見て、幸村さんは大層驚かれているようだ。
「……びっくり、しちゃいましたかぁ?」
「あ、あ、当たり前だ!……っ、夢子、そなたお酒をっ」
「んん……」
胡座をかいていた幸村さんの上に体重を乗せて、真っ赤になって狼狽えられている彼にキスをした。
大胆にも私から舌を絡ませる。冷静に考えれば、よくそんなことを行えましたねと言ってしまうでしょう。
だけど、その時は頭の中が真っ白だというか、ただ幸村さんに欲情して抱いてほしいという思いでいっぱいになっていたのだ。
「……夢子、お、俺は……っ、くっ、後悔しても遅いぞ。もう止まらぬ……っ!」
「ん、あっ!」
客間の畳の上に押し倒された。
視界に広がった天井に、何故か幸せを感じて……
幸村さんの体温を確かめるような、私はそっと彼の背中に腕を回したのだった。
私と貴方の微熱
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