始業式から一週間後に転入してきた女が、深々と頭を下げた瞬間に教室内は酷くざわついた。
その瞬間に転入生は萎縮したのか、身体を小さくする。
その瞳はどこか虚ろだ。
「……あー、みんな仲良くしてやってくれ」
担任は苦笑しながら、俺の隣の空席を転入生に示す。
彼女が教室に入る前に、担任は彼女のことを説明し、色々注意事項を羅列していた。
彼女の事情が事情なので、余計なストレスなどを与えないための配慮だろうが、それが余計に転入生へ先入観を持たせることになってしまったのだろう。
彼女が席へと移動するまで、好奇の視線が向けられていた。
否、だが彼女の名前はニュースに流れていたし(事故当初死亡したと報じられた為、その名前が明かされたのだ)この事態は結局避けられなかったかもしれない。
……まぁ、俺にはまったく関係ないが。
隣に無事着席した転入生に一度だけ視線を向ける。
すぐに後悔した。
向こうもどうやら俺を見ていたらしく、ばっちり視線が絡まってしまったのだ。
「…………何だ」
「あ、その、お隣さん……よろしく、です」
そういえば、彼女は窓側の端の列の為、隣は俺しかいないのかと納得して溜め息を吐き出す。
「……よろしく」
一言だけ返して俺は視線を外したのだった。
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