「壇くん、あれだね、私に全部頑張れと言っているんだね?!」
夢野さんは「もうこうなったら全校やるよ!」と叫んでからまず僕の両肩を掴んだ。
夢野さんの顔が間近に迫ってきて、思わずドキリとしてしまう。
う、うぅ。どうしよう。目のやり場に困ります。
「壇くん、壇くんは、可愛い妹だね!!」
「う、嘘ダーンっ?!」
正直ショックでした。
弟だと思っていたのに……!まさかの妹!!
「そして仁さんは不良の次男ですね。お兄ちゃん、煙草は体に悪いよ!」
「うるせぇ」
亜久津先輩が軽くパンチしたら、夢野さんは「見切ったぁ!」と叫びながら避けたつもりで後ろに転けてました。
「だ、大丈夫かい?詩織ちゃん」
「はぁ、詩織。どこも痛くないか?」
千石先輩と室町先輩が手を貸して助け起こす。
「まったく、少しは落ち着きを持て」
それから東方副部長がため息をつくと、南部長が苦笑していた。
「ごめんなさい。南パパン、東方ママン」
「俺たちは亜久津を産んだ覚えはないぞ」
「大丈夫です。長男は軟派な千石さんなので。ちなみにここにいない新渡米さんがお祖父ちゃんで喜多くんがお婆ちゃんです」
「遺伝を疑う家族構成だな」
南部長のツッコミに部長たちだけ地味ですねと言いそうになった言葉は飲み込んだです。
「……あ、あれ?俺は?」
そういえば、室町先輩が入ってない。
室町先輩はずっと気にしていたみたいだった。
きっと、双子の位置に入りたいって思っていたんだと思います。
でもこの流れなら……
「十次くんは……パンダかな」
「なぁ、壇。パンダ枠と双子枠ってどっちがあいつにとって大切だと思う?」
それから小屋に戻ってからもそんな質問を僕にしてきて。
そのどちらにも入ってない僕からしたら、どっちも羨ましいですって言ったら「そうか」と苦笑していた。
……なんとなく、でも、夢野さんにとってのパンダってすごく特別な気がします。
安心ってことというか癒し系というか。
……あれ?
そこまで考えて、ちょっと室町先輩が可哀想になったのは、僕だけの秘密です。
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